秋の新番組がスタートして早くも2カ月半。さまざまな番組が始まったが、今回はそれぞれの地域を中心に活動するアーティストや、街にスポットをあてた番組から紹介する。世の中が楽しいコンテンツであふれるなか、いずれも「知ってほしい!」という気持ちを強く感じる番組だ(以下敬称略)。
地域の音楽を応援
北海道のHBCラジオは平日22時から24時の時間帯を大きく改編し、この時間はほぼ全ての番組が自社制作となった。新しく始まった番組のひとつ『音楽マシマシ』(月、22:30~23:00)は北海道の下川町出身のシンガーソングライターで、同局の夕方ワイド番組『After Beat』(月~木、16:00~18:30)でおなじみの金子智也がパーソナリティを務める。
『音楽マシマシ』はHBCのテレビ番組としても放送されており(月、24:59~25:29)、ラジオスタジオで収録したゲストとのおしゃべりの様子をテレビでも楽しむことができる。金子の人あたりのよさが垣間見られる番組だ。「THE BOYS&GIRLS」「KOHAKU」「KALMA」をはじめ北海道出身のゲストが多く、同郷のアーティストだからこその踏み込んだ質問も飛び出す。次世代のアーティストにとって金子は"よきお兄さん"的な存在。人間味があふれており、誰とかけあいをしてもゲストとリスナーの笑顔を誘う。
広島エフエムでは『広島音楽応援番組 オトホレワンワン』(金、21:00~21:30)がスタート。コンセプトは「広島県産の"イイ音""面白いコト"を掘り出して応援する100%広島えこひいき音楽番組」。DJは音楽カルチャーを中心にさまざまなフィールドで活躍するキムラミチタ。
「今日のポチ」のコーナーでは広島生まれの曲を"シンガーソングドクター"として活動する齋木トヨノリと深聴きする。広島のアーティストの悩みを解決する「魔法のかがミチタ」や、広島出身の偉大なアーティストを深掘りする「広島音楽むかしばなし」もあり、番組は広島一色。奥田民生を特集した回では、キムラが初めて奥田民生のアルバムを聴いた時の思い出とともに紹介していて、奥深い内容になっていた。"番組公式犬"として登場する「ポチ」はキムラのおしゃべりに対して時にうれしそうに「ワン!」と吠えたり、時に「クーン」と甘えたりと、やりとりも楽しい。
街の魅力を深掘り
FMヨコハマでは神奈川の魅力を伝える『キイテル 神奈川ディス・ラブ』(木、26:30~27:00)が始まった。出演は、かつて同局の番組で、神奈川県内を歩いて街の魅力を伝える番組を5年間放送していた、お笑いコンビ「囲碁将棋」の根建太一(横浜市出身)と文田大介(茅ヶ崎市出身)。7月に話数限定でポッドキャスト配信したところ思わぬ人気となり、レギュラー化した。巡った街を振り返りながら、愛のあるいじりと脱線トークを展開。"聴く観光ガイド"というよりは、地元の人が聴いて「そうそう!」と共感するような話が多い。
特に印象的だったのは「湘南」をテーマに語った回。「湘南はどの地域を指すのか」という話になり、2人がさまざまな街や地元にゆかりのある音楽の話をしながら探っていった。ちなみに、月~木に同じ時間帯で放送している『キテイル』の枠はDJが日替わりで登場するが、全体を通じてポッドキャストと連動しているのも特徴だ。
近畿広域圏をエリアとするMBSラジオでは奈良の魅力を伝える『ならある紀~奈良の路をゆく~』(月、18:45~19:00)がスタート。柏木宏之(歴史コンシェルジュ)が、実際に奈良の街を歩く様子を交えながら奈良の歴史を語る。パートナーは森川由香。
これまでに紹介したのは平城宮跡、東大寺、奈良国立博物館、奈良公園、石宮神社など。柏木はMBSの元アナウンサーだけあって、味のある話し方で解説もとても丁寧。奈良について知りたい人の耳と心を引き寄せる。奈良県観光局の竹田博康局長も登場し、より細かい情報を伝えるのもポイント。柏木は「奈良は日帰りではなく、泊まってじっくりと楽しんでほしい」と話す。
福岡のRKBラジオでは『サンデーウォッチR』(日、12:30~15:00)がスタート。同局で放送しているテレビ番組『サンデーウォッチ』(日、10:30~11:24)と、ニュースサイト「RKB NEWS DIG」に連動。パーソナリティの下田文代アナウンサーは報道記者、キャスターを務めていた。さまざまなコメンテーターを招いて地元の話題に迫るコーナーが軸になっており、ひとつの話題についてしっかりと時間をとって迫っていく。
下田アナのおしゃべりが心地よく、フリートークは楽しいエッセイのようだ。「文代の今週のハッピー・アンハッピー」のコーナーは「髪をセットしたら艶が戻った」「映画を観てハッピーな気持ちになった」など、日常のちょっとしたうれしい出来事を話す。下田アナは「小さな出来事ですが、これが私の人生なんです」と謙遜していたが、そこがいい。
日本語の奥深い世界を探求する「日本語練習帳」のコーナーもある。なかでも同局の神戸金史解説委員長が「江戸ことば」を解説した回は興味津々。「『だらしない』はもともと『しだらない』という言葉で、江戸時代に流行した倒語が残ったもの」といったことを分かりやすく紹介した。
「ポッドキャスト」にクローズアップ
「民放online」はポッドキャストの魅力を紹介するシリーズを展開しているが(第1回目の拙稿はこちら)、ここ数年でポッドキャストにクローズアップした番組が増えている。そのなかから2本を紹介する。
RKBラジオではポッドキャストで配信していた『Podcast Lab. Fukuoka』(土、7:00~7:30)が地上波での放送をスタート。パーソナリティは『歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)』でJAPAN PODCAST AWARDS 2019大賞を受賞した樋口聖典(株式会社BOOK代表取締役)と武田早絵アナウンサー。
番組にはポッドキャスターが週替わりで出演。ポッドキャストを始めたきっかけや、収録時の様子などを話す。なかでも「ポッドキャスターが勧める番組」の話を聴いていると、無数のポッドキャスト番組のなかで自分にピッタリの番組を見つけるには、番組のテーマが大事であることがあらためて分かった。ニュース解説、恋愛話、歴史、ビジネス、お悩み相談など、気になることがテーマになっている番組があれば、まずは再生してみることが、新しい世界の入口につながると思う。
ラジオ沖縄では『ポッドキャスト戦略室』(水、22:50~23:00)が始まった。同局でオリジナルのポッドキャスト番組を配信しているパーソナリティたちが月替わりで登場する。番組内容の紹介、収録に向けた準備や収録時の秘話、編集で使うアプリなどについて話す。沖縄で新しい働き方を実践する女性コミュニティによる『OFNEのフリーランス女子レディーオ!』の出演者が登場した回では、初めて収録した日の失敗談や「ラジオは事前準備が8割」というセオリーを明かした。
平日夜を大きく改編したABCラジオ
このほか、注目のパーソナリティや企画の新番組を紹介する。
大阪のABCラジオは平日の夜の時間帯を大きく改編した。なかでも『ツギハギ』(月~木、21:15~23:30)は2時間15分の生放送。曜日によってテイストが異なる。
月曜日は『ツギハギ月曜日~ヤーレンズのダダダ団!~』。お笑いコンビ、ヤーレンズにとって4本目のラジオ番組だ。ツッコミ担当の出井隼之介は10代の頃からラジオっ子。随所で相方の楢原真樹がボケていて、なかなか前に進まないトークが面白い。
火曜日は『ツギハギ火曜日~超能力戦士ドリアンのたのしいラジオ~』。超能力戦士ドリアンは関西を中心に人気沸騰のバンド。賑やかで放課後の部室の会話を聞いているようだ。
水曜日は『ツギハギ水曜日~ラフ次元の遅咲き19BLUES~』。「THE SECOND ~漫才トーナメント 2024」で初の決勝に進出したラフ次元の梅村賢太郎・空道太郎が、苦節19年で冠ラジオをスタート。41歳と43歳のおじさんならではの話も飛び出す。
木曜日の『ツギハギ木曜日~国山ハセンのまじマジ~』は他の曜日と異なる雰囲気。政治ジャーナリストや文芸評論家など、気になる話題にゲストとともに迫る。
宮崎のMRTラジオでは『勇ちゃんのポッピン・ランチタイム』(水、12:00~12:50)が7月にスタート。宮崎でDJや音楽活動を行う黒木勇一郎の番組だ。オールディーズをはじめ、古きよき洋楽を生放送で届ける。黒木は聴いている"私"に低めのいい声で語りかけてくるため、気がつくと勇ちゃんワールドにハマっている。勇ちゃんの「毎週この時間にラジオで話すのが、楽しみで楽しみでしょうがない」という気持ちがヒシヒシと伝わってくる。
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繰り返しになるが、楽しいコンテンツにあふれている今日この頃。ポッドキャストやYouTubeで過去の放送が聴ける番組が増えたり、radikoで1カ月分が遡って聴けるプラン「タイムフリー30」がスタートしたり......音声コンテンツを気軽に楽しめるツールも広がりつつある。生まれたばかりの各局の番組が、ひとりでも多くの人に楽しんでもらえるように願うばかりだ。