米スーパーボウル2024 ライブ視聴は1億2,300万人超 テレビ史上最多に

編集広報部

米国最大のスポーツイベントである第58回NFLスーパーボウルが2月11日にラスベガスで開かれた。テレビはCBS、ニコロデオン、スペイン語放送のユニビジョン、配信はParamount+が生中継した。これらリニア3チャンネルと配信を合計した総視聴者数は平均で1億2,340万人(ニールセン調べ、CBSスポーツの発表)。昨年FOXが中継した1億1,520万人から7%増え、テレビ史上最多の視聴者数を記録した。国民の半分近くがテレビ画面に釘づけだったことになる。

このうちCBSだけでも1億2,000万人の視聴者数を獲得。単独のテレビネットワークによる史上最多となった。ユニビジョンは220万人で、スペイン語放送局でのスーパーボウル中継でこちらも過去最多。CBSの姉妹チャンネル・ニコロデオンは子ども向けの内容で中継した。ニコロデオンとParamount+のデータは発表されていないものの、CBSは「史上最多の配信視聴」とうたっている。しかし、実際はParamount+での視聴は芳しくなかったとの報道もあり、昨年FOXが発表した配信視聴者数700万人には及んでいない模様だ。

ニールセンに対抗して、クロスプラットフォームの視聴測定に強いiSpot.TVは秒単位の視聴データを弾き出しており、CBS、ニコロデオン、ユニビジョン、Paramount+を合計した視聴者数は平均1億2,660万人(前年比10.9%増)と、ニールセンよりも高い。バーやレストランなど自宅外での視聴者数は2,590万人だったという。iSpot.TVは今回、データの発表も一番乗りだったことで評価を得た。アドビアナリティクスのデータを取り込んだニールセンより7時間も早く発表している。

▶"テイラー・スウィフト効果"
今年のスーパーボウルのもう一つの話題は、歌手テイラー・スウィフトの存在だ。今シーズンのNFLはカンザスシティー・チーフスのトラビス・ケルシー選手と交際するスウィフトの話題で持ちきりで、スーパーボウルはその集大成とも言える結果となった。直前の7―10日に日本での東京ドーム公演を終えたばかり。試合に間に合って帰国できるかをめぐって日本でも話題をさらった。記録的な視聴者数の背景にも"テイラー・スウィフト効果"あり。彼女を追いかけてアメフトを見始めたという若い女性ファンも多く、放送局もNFLもこの世界の歌姫効果の恩恵に浴したと言えそうだ。

生中継にはチョコレートなどのスイーツブランドや、化粧品など女性向けブランドの広告が増えた。しかも30秒CMの価格は平均700万ドル。2016年には440万ドルだった。この高額な枠をCBSが難なく売りさばいたのも、「スウィフト効果による女性視聴者数の増加が功を奏した」と米メディアは報じている。NFLにとってもCBSにとってもまさに幸運の女神だったようだ。

▶試合延長でCBSは6,000万㌦の"棚ぼた"
CBSにとってさらなる幸運は、この試合が接戦だったこと。延長戦の末に25対22でチーフスがサンフランシスコ・フォーティーナイナーズを下したが、この延長でCM5枠が追加され、CBSは6,000万ドルの追加売上を得ることとなった。

アドエージ誌が関係筋の情報を基に報じたところによると、延長の可能性を想定してCBSはその枠のCM契約を事前にスポンサーに交渉し、契約していたという。試合中(第1―4クオーター)の30秒CM枠の平均価格が700万㌦なら、延長分は400万㌦という割引価格を設定。ブランドによっては大会開催前から交渉して万が一に備える一方、延長が決まった時点でリアルタイムの交渉を始めるブランドもあったという。ただし、CBSの親会社パラマウントグローバルはこれについてのコメントを避けている。

"リニア最後の砦"ともいえるスポーツ中継のなかでもNFLは圧倒的な強さをみせる。22年の最新データでテレビ番組トップ100番組のうち93番組がNLF中継。20年には72番組だった。そのシーズン王座決定戦であるスーパーボウルは長年、米国中がテレビの前でシンクロ体験をする唯一無二のコンテンツ。配信の台頭でリニアの存在が薄れているが、スーパーボウル中継だけは年々リニアでの視聴者数を伸ばしている事実は注目に値する。

▶パラマウントに売却のうわさも
ただ、この記録的なスーパーボウル中継の2日後、パラマウントグローバルのボブ・バキッシュCEOが経費削減を理由に大型レイオフを社内通達したとアドウィーク誌が伝えた。CBS、Paramount+、パラマウント・ピクチャーズ、Pluto TV、Showtimeその他ケーブルネットワークで800人が解雇される可能性があるという。パラマウントは昨年から売却のうわさがあり、スカイダンス・メディアやメディア界の大物バイロン・アレン率いるアレン・メディアがすでに買収に動き出していると伝えられており、この動向も今年の大きな話題となりそうだ。

最新記事