米国で次世代テレビ規格ATSC 3.0を推進する組織「ATSC」(Advanced Television Systems Committee)は1月初旬、米ラスベガスで開催された世界最大のエレクトロニクスショー「CES2024」で、中国の家電メーカーTCLがATSC 3.0チューナーを搭載したCTVを米国で発売すると発表した。同チューナーを搭載するメーカーはソニー、Samsung、Hisenseに続き4社目。昨年9月、韓国のLGが特許問題を理由に米国市場から撤退し、業界を落胆させていただけに新年早々明るいニュースとなっている。
2024年は2月に全米75%のテレビ市場で最低1局がATSC3.0を導入することになっており、シカゴ、サンディエゴ、ツーソンといった主要市場でもスタートする。ATSCのマデレーン・ノーランド代表はCESで「送信側の普及も順調に進み、これから重要になるのが消費者サイドの受信インフラだ」と指摘。通信デバイス開発のZinwell、デジタルTVチューナーのメーカーZapperbox、スマートホーム・デバイスメーカーStavix、デジタルメディアプラットフォームを提供するAdTheorent Holding(ADTH)が新たに認証済みの受信機を発売すると発表した。これらには、デジタル録画機能付きのモデルも含まれる。
CESを主催する全米民生技術協会(Consumer Technology Association=CTA)によると、24年はATSC 3.0受信機を搭載・接続したテレビ台数が累計1,030万台となり、次世代テレビ関連の売上も前年比45%増が見込まれるという。外付け受信機のモデル数も24年は倍増すると予測。「消費者がテレビを買い替えることなく安価に次世代放送を受信できるようになり、次世代テレビ躍進の年となる」とノーランド代表は話している。
CESではこのほか、ドルビー・ラボラトリーが開発した最新音響技術Dolby Atmosが次世代放送規格に導入されることでイマーシブ(没入型)エンタメ体験を可能にすることや、地上波でのローカルスポーツ中継の拡大など次世代放送規格が提供できるさまざまな機能と視聴体験がATSCの展示ブースでアピールされた。