4年延長2大会分を30億㌦で合意
3月13日、米メディア大手のコムキャストと傘下のNBCU(NBCユニバーサル)がオリンピックの米国向けメディア権を開催地未定の2036年まで延長することでIOC(国際オリンピック委員会)と合意したと発表した(冒頭画像はコムキャストのリリース)。契約延長金は総額30億㌦(約4,400億円)。地上波のNBC、配信のピーコック、ウェブサイトほかグループの全プラットフォームにおける動画展開を含む。これで34年の米ユタ州ソルトレイクシティ冬季大会もNBCUが中継することが決まった。
今回の契約延長は、デジタル時代の"戦略的パートナーシップ"と銘打ち、独占放送と配信にとどまらず、新たな合意事項が加えられた。コムキャストはIOCに撮影・中継・配信技術などの放送インフラを総合的に提供。国際信号を制作するOBS(オリンピック放送機構)へのサポートのほか、IOCとの合同イベントを現地や全米各地で開催する。また、米国内でデジタル広告プロジェクトを展開するなど、広範囲に相互協力するという。これらは即時発効で、26年のミラノ・コルティナ冬季大会は24年のパリ夏季大会以上の技術的な充実が期待される。
NBCUとIOCの歴史は長い。NBCUが初めて全米でオリンピックを独占中継したのは1964年の東京大会。以後、夏季は88年から、冬季は2002年からいずれも連続でNBCUが独占中継している。夏季・冬季合わせると13大会連続、合計19大会。36年までに連続19回、合計25大会となる。また、コムキャストはオリンピックとパラリンピックの米国内大手スポンサーで、2017年からは米国代表チームの公式パートナーも務めている。両者は2014年、2022年冬季~32年夏季の計6大会分のメディア権を総額76億5,000万㌦(約7,800億円=当時)で獲得していた。
配信による世界中継もくろむMLB
大谷翔平や山本由伸ら日本人選手の大活躍を背景に、日本での注目度がこれまで以上に高まっている米MLB(メジャーリーグベースボール)。2025年は3月18、19の両日、シカゴ・カブス対ロサンゼルス・ドジャースの開幕戦2試合が東京ドームで行われ、日本テレビ系列が生中継した2日間のテレビ視聴推計人数は合計5,691万人(ビデオリサーチ調べ)と、米国内での視聴者数をはるかにしのぐNFL並みの数字を弾き出した。
そんなMLBの放送権契約が近い将来、グローバル規模になる可能性があると3月半ばに報じられた。スポーツ専門のニュースサイト「The Athletic」によると、MLBは今後、米国内と海外での放送・配信権を合体させることを示唆している。ケーブルのRSN(リージョナル・スポーツ・ネットワーク)のビジネスモデルが崩壊しつつあり(参考記事はこちら)、MLBは配信による新しい中継モデルを模索しているという。
MLBの中継権は、全国向けと各球団が地域の放送局と結ぶローカル局向けとに大きく大別される。しかし、MLBは今年2月にスポーツ専門局ESPNとの間で30年以上続いたケーブルテレビによる全国向け契約を2025年で打ち切ると発表したばかり。MLBはFOXやWBD(ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー)とも28年まで契約している。それを見越して、次期の交渉が始まる28年には世界の野球ファンにシーズンを通して試合を見てもらえるよう、米国内を含むグローバル契約を模索しようというわけだ。そこでは配信モデルが想定され、単一の配信サービスがリーグ全試合をグローバル配信するビジネスモデルも視野に入ってくるという。
MLBは米国人以外にも中南米の選手が多く、近年はそこに日本人選手が食い込んで話題をさらっている。MLBのコミッショナー、ロブ・マンフレッド氏は「MLB人気は世界中で高まっており、特に日本と韓国では爆発的だ。メディア権のセールス方法を根本的に変えるいい機会になる。グローバル展開で新たなビジネスモデルを確立したい」と話している。
契約先の候補として早くも挙がっているのはAmazon Prime Video、DAZNなど。Amazon Prime Videoは米国内でのNBA(プロバスケットボールリーグ)のメディア権を獲得する前に、NBAのブラジル市場進出の一翼を担っている。DAZNも世界の一部市場でNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)とNBAの試合を配信している実績があり、有力視されている。