第49回放送文化基金賞の贈呈式が7月13日にオークラ東京で開かれた。既報のとおり、最優秀賞に輝いた民放3番組を含む受賞関係者が一堂に会し、それぞれに喜びを語った。
開会にあたって、放送文化基金の濱田純一理事長があいさつ。「メディア環境が大きく変化し、視聴習慣が変わる中、良質で信頼できるコンテンツづくりに切磋琢磨する受賞者の皆さんに敬意を表したい」と称えた。来賓として招かれた民放連の遠藤龍之介会長は「テクノロジーの進化は激しいが、即物的なものだけを追い求め過ぎると文化を創造し尊ぶ心が痩せ細ってしまう。文化的クオリティが失われ始めても、それを受け止めるのは人の心の問題だけに、すぐに気づかない。文化的な質と量をチェックするこうした賞の重要性はこれからも変わらない」と同賞や番組コンクールの意義を語った。
エンターテインメント部門で最優秀賞を受賞したのは読売テレビと中京テレビが共同制作した『~この後どうする?密着TV~終わりが始まり』。坂谷龍司ディレクター(読売テレビ)は「人生の一大イベントの"その後"に密着した番組で、人生ってすごくいいなあ、これからもがんばっていこうと思っていただけたのではないか。今後も中京テレビさんと一緒に次回作を目指したい」と語った。
<坂谷龍司氏(読売テレビ)㊧と鳥居大雅氏㊨(中京テレビ)>
ドラマ部門は関西テレビの『エルピス-希望、あるいは災い-』が最優秀賞に輝いた。稲垣護プロデューサー(GEEK PICTURES所属)は「渡辺あやさんの脚本、大根仁監督の演出、素晴らしいキャストとご一緒させていただけるだけで幸せなこと。それに負けちゃいけないという現場の一致団結が映像に反映されたのでは」と振り返った。
<稲垣護氏>
ドキュメンタリー部門の最優秀賞は北海道放送の『性別は誰が決めるか~「心の生」をみつめて~』。「性別や国籍、障害のあるなし......世の中にあるいくつもの境界線がどんな基準で作られ、どのような眼差しで見られているのか。でも、その境界線は実はとても曖昧なものではないのか。"私たちとあの人たち"と簡単に分けて他者化できる問題ではないのでは? 共感の先に境界がどのように見えるかを問いたかった」と泉優紀子ディレクター。「このドキュメンタリーには全員が顔を出して取材を受けていただいた。時には人の命を奪うような差別や偏見が根強いこの世の中で、それでも勇気を出して取材に応じてくださった方々に感謝したい」と述べた。
<泉優紀子氏>
最後に登壇したのが、『エルピス-希望、あるいは災い-』で演技賞を受賞した長澤まさみさん(=冒頭写真/左から長澤さん、佐野亜裕美・稲垣護の両プロデューサー)。「各部門で受賞された方々のスピーチを聞き、私が演じた浅川恵那のような方がたくさんいて、そんな主人公を演じられてよかった。テレビから教わることはまだたくさんあり、大きな勇気をいただけた。人に勇気を与えられるようなお芝居をこれからもできるよう、がんばっていきたい」と結んだ。