沖縄民放からみる「本土復帰50年」② 番組アンケートの結果から テレビ編

編集広報部
沖縄民放からみる「本土復帰50年」② 番組アンケートの結果から テレビ編

今年、本土復帰から50年を迎えた沖縄。民放onlineでは、復帰50年となる5月15日と77年目の慰霊の日である6月23日を中心に、沖縄の民放各局のレギュラー番組や特番に関するアンケートを行った。ラジオに続き、テレビ各局の取り組みを紹介する。


5月15日は、各局がデイリーニュースで復帰50周年記念式典の模様を伝えただけでなく、それぞれに特番を組んだ。琉球朝日放送(QAB)『復帰50年 道しるべ』は、14時からの式典の模様を交えながら、琉球大の我部政明名誉教授、沖縄国際大学の前泊博盛教授らが出演し50年にわたる沖縄振興計画などを検証した。琉球放送(RBC)の番組は、沖縄戦以降の歩みや米軍基地問題などをまとめたVTRを紹介。式典に合わせてハンガーストライキを行い、お祝いムードに疑問を投げかける若者を中継で取り上げ、いまだ多くの課題が横たわる沖縄の現状や本土との意識の差を視聴者が考える機会とした。沖縄テレビ(OTV)『復帰50年未来へ オキナワ・沖縄・OKINAWA』(=写真㊤)は、50年間のアーカイブ映像を紐解きながら、映画『ナビィの恋』を手掛けた中江裕司監督らゲストが感想を語り合うスタイル。復帰後世代が県人口の約6割を占める中、沖縄の歴史を踏まえ、未来を展望する狙いで制作した。

各局は夕方のニュース番組で長期にわたるコーナーを展開している。RBCの『RBC NEWS Link』は『HOPE50』と題し、日米関係や安全保障、経済、インフラ、文化・芸能など多彩な切り口で1月から5月まで毎週リポートを届けた。OTVは、復帰特番と同名の企画『復帰50年未来へ』を昨年の5月14日から『OTV Live News イット!』で継続中だ。復帰運動の源流、沖縄と自衛隊、米軍による事件と日米地位協定、高校野球の歩みなど、多角的なテーマが並ぶ。QABの『CATCHY』は、1月から年間を通じて特集『復帰50の物語』を組む。復帰にまつわる世相や文化、基地問題などを、復帰を知らない世代も一緒に考えられる内容としている。5月には、エフエム沖縄の復帰50年特番『ライセンス~アメリカと日本のはざまで~』制作の裏側を取り上げた。

戦没者を二度殺すのか②壕で遺骨を探す具志堅さん.png

<QAB『戦没者を二度殺すのか~沖縄戦戦没者遺骨が眠る土と埋め立て計画~』から>

15日の復帰当日以外にも複数の特番が組まれた。OTVは3月から7月まで、復帰という世替わりの中で時代を切り開いた人物を紹介する『オキナワ強者(チューバー)列伝』を月1回生放送。経済、食、流通、女性と毎回テーマを置き、直近の7月はスポーツ=具志堅用高スペシャルとした。QABは2月、辺野古の新基地の埋め立て用の土砂に戦没者の遺骨が含まれる南部の土砂を使おうとする動きを、『テレメンタリー』で『戦没者を二度殺すのか~沖縄戦戦没者遺骨が眠る土と埋め立て計画~』として取り上げた。また、6月には、米軍基地を由来とする有害物質による水源汚染の問題を『命ぬ水~映し出された沖縄の50年~』で描いた。RBCは、夕方ニュースと同じく特番でも『HOPE50』を掲げ、▷沖縄本島北部のやんばるの森を米軍基地から守ろうと立ち上がった住民の行動(4月)、▷池上彰と初めてタッグを組んで復帰50年を総決算(5月)、▷観光や暮らし、芸能などをテーマにクイズを出題し、オンライン参加の県民とともに沖縄の今と未来を議論(6月)、などの企画を放送。8月には、復帰前後の沖縄で起きた奇妙な出来事を描くオムニバスドラマを放送する予定だ。


次に、6月23日の慰霊の日を中心とした取り組みを見てみる。RBCは特番『ウムイつむぐ~着物が語る"やんばるの戦"~』を制作。本島北部に疎開してきた家族がお米と引き換えに疎開先の家族に渡した着物を起点に、北部地域の戦争の実相を伝えた。また、1997年放送の『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス~そして核の密約は交わされた~』を、当時の制作者のインタビューなども加えてオンエア。佐藤栄作首相の密使だった若泉敬が明かした返還交渉での密約から、現在の沖縄に続く史実を見つめ直した。当日のニュース枠はほぼ全てを慰霊の日関連とし、ロシアによるウクライナ侵攻と沖縄戦を重ねる声や、全戦没者追悼式への3年ぶりの首相の参加に県民から抗議の声が上がったことなどを取り上げた。また、沖縄戦で20万人もの犠牲者が出た要因を取材し特集化した。

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<RBC『ウムイつむぐ~着物が語る"やんばるの戦"~』から>

OTVはシリーズ企画『戦世から77年』を6月2日から『OTV Live News イット!』内で組んでいる。23日は、昨年の慰霊の日に放送した『遺骨~声なき声をきくガマフヤー~』を特別編成で放送。遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表の約40年におよぶ活動を通じ、いまだに遺骨が見つかる本島南部がどのような場所なのかを掘り下げた。OTVが運営する地域サイト「OKITIVE(オキティブ)」では、コーナー内容をテキスト化し掲載している。

QABは『CATCHY』内で、当日の出来事をナレーションなしの約8分間のドキュメントにまとめたほか、沖縄の伝説のロックバンド「紫」の不戦を誓う歌を取り上げた。また、慰霊の日に関連するメッセージを視聴者から募り、MCの当日の過ごし方なども伝えながら番組全体を戦没者を想う内容とした。

取り組みへの反響を振り返ると、OTVは『オキナワ強者列伝』の視聴率が好調で、「若年層が関心を持ってくれたテーマもあった。若い世代には学びに、復帰を知る世代には記憶がよみがえる内容になり、感動、刺激、自己肯定感につながるエピソードがコロナ禍もあって受け入れられたのでは」とみている。

RBCが5月に放送した『HOPE50』シリーズの特番『池上彰と復帰50年を総決算スペシャル』は、個人全体視聴率が16.5%、世帯視聴率が25.8%と高視聴率を獲得し、ほかの番組も多くの感想や反響を呼んだ。

特集『復帰50の物語』を組んだQABは2010年の戦後65年の際、1年を通じて「65年前のきょう」を連日伝えた経験がベースとなったという。「報道制作部員のほとんどが復帰後生まれの中、記者やディレクター、カメラマンらが学び、時には追体験する感覚を覚えながら制作した。作り手としても大切な体験となっている」と振り返る。

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