AIR-G'、広島FM 独自の"音"聴かせるニッチなラジオ番組

編集広報部
AIR-G'、広島FM 独自の"音"聴かせるニッチなラジオ番組

「貨物列車」と「高級車」――。やきそばかおるさんが民放onlineのコラムでも触れているとおり、この秋、独特の「音」にこだわったローカルラジオ番組が始まっている。番組立ち上げの背景や手応えを制作者に聞いた。


AIR-G'(FM北海道)の『JR貨物presents Sound of Train』(月―金、23・55―24・00)は、貨物列車の走行音に車両の内外から迫る。企画の発端は、「人以外、運べる全てを」などの広告コピーを展開してきたJR貨物北海道支社からのオファーだ。番組を担当し、ナレーターも務める高山秀毅氏は「キャンプや道内の食など、これまでさまざまな音を番組で扱ってきたつもりだが、貨物列車のイメージはなかった。目を惹く感動的なコピーが表しているように、『貨物列車は私たちのために働いてくれている』との思いが伝わるよう、力になりたいと考えた」と立ち上げの経緯を振り返る。

番組では、道内3つの主要な貨物路線を月ごとに取り上げる。スタートは北見~旭川間を走るいわゆる「タマネギ列車」から。運転台に置いた録音機は、走行音だけでなく時に運転士の声も拾う。「運転士のプレッシャーにならないよう、同じ空間でも反対側にいるよう配慮した」と高山氏。また、車両外の音を別の班が収録しており、青函トンネルに車両が入る瞬間の音はベテランスタッフがガンマイクで狙ったという。

20秒CMも入る5分枠の番組のため、ナレーションによる説明は最小限に抑えて列車の音に特化した。毎回聴くことで用語などの意味が伝わるようにしている。月―金の帯で5分間という枠の確保には苦労したものの、後枠の『JET STREAM』(TOKYO FM)と並ぶことで"電車から飛行機への乗り換え"というめぐり合わせも感じている。

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<ゲストナレーターの市川紗椰さん

番組は12月いっぱいまでの期間限定だが、JR貨物とは仲間のような関係で制作にあたっているという。また、RSK山陽放送の坂俊介アナウンサーが番組内で紹介したことから、岡山在住の大学生からAIR-G'にメッセージが届くなど、リスナーからの反響も大きい。11月からは、鉄道好きで知られるモデルの市川紗椰さんがゲストナレーターとして登場。市川さんの鉄道への熱い思いは、近日公開予定のポッドキャスト用のスピンオフ番組で聴くことができる。

広島FM『Premium Car Sound Gallery supported by Katakami Auto』(金、12・55―13・00)は、アルファロメオ、ポルシェ、フェラーリといった高級車のエンジン音やドアの開閉音、ウィンカーの音などをじっくり聴かせる番組だ。

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広島市で新車や中古車の販売などを手掛けるKatakami Auto社の一社提供。番組を立ち上げた営業部の馬場啓之氏は、音声コンテンツの可能性が議論されている昨今、「ラジオという前提を取っ払って何かできないかと考えていた。なかなか手の届かない高級車が題材だが、全国、あるいは世界に目を向ければ、ニッチな層に喜ばれる番組が作れるのでは」と狙いを明かす。Katakami Autoには飛び込み営業に近い形で打診。業態上、広告を打つ意義は薄いものの、馬場氏は「面白い番組づくりに協力しようと思ってもらえた」と感触を語る。

車によってはウィンカーがあまり鳴らなかったり、ドアが自動オープンで開閉音がしないなど、収録ではさまざまな苦労も。音量や音域の幅の広さもネックだというが、11月からはエンジンの回転数を徐々に上げる過程を録音するなど、試行錯誤を重ねている。車の選定はKatakami Autoに任せているが、車種の新旧や音のタイプなどを考慮して制作に協力してもらっている。

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<高級車の"音"収録の模様>

一風変わった番組だけに、制作スタッフの周辺では録音方法などについて関心が寄せられているほか、Katakami Autoにも「面白いことやっているね」といった声が届いているという。「聴き比べると楽しいので、もっと回を重ねてリーチを広げたい。Katakami Auto側も『長く続けないと意味がない』と言ってくれており、エリアの枠を越えた広告戦略を展開していく」と馬場氏は展望する。

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