英BBCの受信許可料、4月から年10.5㍀値上げ 財源モデルのあり方も検討へ

編集広報部

英国の文化・メディア・スポーツ省(DCMS)のルーシー・フレイザー大臣は12月7日、来年4月からBBCの受信許可料を10.5㍀引き上げ、各世帯の年間負担額を現行の159㍀から169.50㍀(約3.1万円)にすると発表した。BBCにとっては、過去2年間受信許可料が凍結(インフレ調整含む)されていたため、ようやくの値上げとなるが、同国のインフレ率を下回ることになり事業資金は来年も実質減となる。BBCは今後さらなるコスト削減に迫られることになる。

EU離脱やウクライナ情勢の影響で高いインフレ率に見舞われた英国は物価高を抑え込むことに苦戦しており、2023年も前年比で物価が9%上昇している。通例の調整額計算(年間インフレ率)を適用すると、受信許可料の値上げ額は15㍀となる。BBCにとってインフレ調整は実質的な財源増にはならないが、年間の世帯負担が173㍀になるため、家計への圧迫を懸念する声が上がっていた。こうしたなか、スナク首相が12月1日、BBCの受信許可料値上げは「より現実的であるべきだ」と発言し、BBCへの負担増を容認する姿勢を示していた。

フレイザー大臣は7日、「家庭が直面する継続的な生活費の逼迫を考慮して、政府は本日、受信許可料のインフレ連動引き上げの計算方法を変更することを決定した」とし、24年4月から6.7%増の年間169.50㍀とすると発表。「値上げは最小限に抑えられるため、増加額は年10.5㍀、ひと月の負担は1㍀以下にとどまる」と説明し、ジョンソン政権時代の受信許可料凍結によるカット分も含めれば各世帯で37㍀の負担軽減になると強調した。

24年の秋にも総選挙を戦わなければならないスナク政権は、移民問題と国民の負担軽減を最優先課題としていることから、BBCは保守党の人気取りの材料となったという見方もある。大臣は今回の値上げを、国民の負担を軽減しながら、同時にBBCが世界をリードするコンテンツを制作し続けられる38億㍀の財源増をもたらす「フェア(公平)な措置」だとアピールしている。

BBCは2年間の受信許可料凍結に対応するため20億ポンドのコストカットを行っており、つい最近も5億㍀を減らすためにBBC2で平日夜に放送している看板報道番組『Newsnight』のスタッフを半減し、放送時間を短縮したばかりだ。

受信許可料の引き上げ幅を低く抑える今回の決定で、新たに約9,000万㍀の財源不足が見込まれる。BBC側はこれを厳しく受け止めており、「番組予算が影響を受け、英国全体のクリエイティブ産業に大きな影響を与えることになるだろう」とコメントしている。

受信許可料改定の発表にあたってフレイザー大臣は、昨年1年で40万人以上が受信契約を更新しなかったことを明らかにした。メディア環境の変化で視聴者に多様な選択肢が生まれるなか、「テレビ視聴を受信許可料と連動させることは時代錯誤」と述べ、BBCの財源モデル見直しを行うための第三者による委員会を早急に立ち上げることも発表。大臣は「視聴者に有益な情報を提供するBBCが繫栄し続けることを望んでいる」としながらも、「そのために国民に無期限で多額の出費を求めることはできない」と発言。支払い負担を軽減しながらBBCの長期的な持続可能性を確保するため、どのような代替モデルがあり得るか検討するとしている。検討結果は、27年末に期限切れとなるBBCの特許状の見直しに反映される。

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