米大統領選挙における民主党のティム・ウォルズ氏(現ミネソタ州知事)と共和党候補のJ・D・バンス氏(現連邦上院議員、オハイオ州)の両副大統領候補者討論会が10月1日、CBSの主催でニューヨーク市のCBS放送センターで開かれた(冒頭の画像はCBSニュースのサイトから)。21時から22時45分(米東部時間)まで行われた討論会はCBSをはじめABC、FOX(地上波ネットワーク)、NBC、Merit Street Media、Scripps News、CNN、CNNe、FOX News、FOX Business Network、MSNBC、NBC Universo、Newsmax、NewsNation、PBSの15局で同時生放送され、全局合計の平均視聴者数は4,315万人だった(ニールセン調べ)。
ちなみに、9月10日のABCによるカマラ・ハリス×ドナルド・トランプの両大統領候補のテレビ討論は6,700万人以上が視聴している。ニールセンが副大統領候補者討論会のデータを取り始めた1976年からの平均視聴者数は約4,600万人。副大統領候補者討論会のこれまでの最高視聴者数は2008年のサラ・ペイリン(共和党)×ジョー・バイデン(民主党)の6,990万人で、最低は1996年のアル・ゴア(民主党)×ジャック・ケンプ(共和党)の2,660万人。2020年のカマラ・ハリス×マイク・ペンスは5,790万人だった。今回は平均にはわずかに及ばなかったが、相応の視聴者数を得たと言える。
視聴者数を局別にみると、トップはホスト局のCBSで957万人。以下、FOX News793万人、ABC635万人、NBC567万人、MSNBC488万人、CNN337万人、FOXの248万人。これらで全視聴者の約90%を占めた。 年齢別は55歳以上がほとんどで、2,965万人。35~54歳が947万人、18~34歳が301万人だった。
視聴者数は平均的だったが、今回はファクトチェックとマイクのオン・オフ問題で注目された。9月のハリス×トランプ討論会で司会者がトランプ氏の発言に何度かリアルタイムでファクトチェックを入れたことに対してメディア業界からは賞賛の声が上がった。しかし、これに異を唱えたのがトランプ氏とその陣営で、「ABCの放送局免許を剥奪しろ」と米連邦通信委員会(FCC)に訴えるまでに発展。FCCはこの訴えを即時に却下しているが、それだけにCBSの方針に注目が集まっていた。
CBSの出した結論は、司会者が討論中にリアルタイムでファクトチェックをしないこと。事実確認は候補者間の建設的な意見交換を促すなかで実践しようという方針で臨んだ。そのため、マイクも常にオンにしておくことをルールとした。
さらに、最新技術を導入したファクトチェック対策も試された。テレビ画面にQRコードを表示し、視聴者がスマホでスキャンするとCBSのファクトチェックサイトに飛ぶというもの。討論中、舞台裏ではCBSのスタッフ約20人が発言の真偽を随時確認し、サイトにリアルタイムでアップロードするという仕組みだ。ただし、このシステムはCBSでのみ導入され、他局で中継を見ている視聴者は利用することはできなかった。
ただ、この試みは残念な結果に。QRコードをスキャンしてもリンク切れが頻出し、ファクトチェックのページが見つからず、モタモタしていると肝心の討論を見逃してしまうため、諦めた視聴者も多かったという。政治討論会におけるファクトチェック対策としてアイデアは面白く、今後、技術的な問題をクリアすることで、他局が追随する可能性もある。今回リアルタイムでは成功しなかったが、討論会中の発言のファクトチェックはCBSの特設サイトで閲覧できる(外部サイトに遷移します)。
さらにニールセンによると、ほとんどの視聴者が討論会を最初から最後まで見たという。その理由の一つとして、ファクトチェック問題への国民の関心が高かったという見方もある。しかもCBSはリアルタイムでファクトチェックしない方針を打ち立てながら、移民問題の討論中に司会者の一人マーガレット・ブレナンがバンス氏の発言の誤りをただしたところ、バンス氏が反論。言い合いになるなかで最終的にはマイクを強引にオフにする一幕もあるなど、白熱した展開が視聴者をテレビにつなぎとめたと言えそうだ。