米連邦地方裁判所は4月17日、アルファベット社傘下のGoogleに対してオンライン広告事業の一部が反トラスト法(独禁法)に違反するとの判決を下した(冒頭画像は米連邦司法省のリリース)。これを受けて司法省が行う是正措置によっては、オンライン広告市場が今後一変する可能性もあると注目を集めている。
裁判はオープンウェブ・ディスプレイ広告(無数に存在するウェブサイトの固定ボックス内に表示される、ありふれたデジタル広告スペース)の市場で、Googleの①ウェブパブリッシャー向け広告サーバー(DFP)、②デジタル広告を促進するための広告エクスチェンジ(Google AdX)、③オンライン広告ネットワーク――の3つが市場を違法に独占しているとして、司法省が提訴していたもの。今回、バージニア州東部地区連邦地方裁判所が独禁法違反を認定したのは、①と②。加えて、Googleが過去10年以上にわたって①と②を技術と契約の両面から不当に抱き合わせてきたとし、「顧客を縛ることで独占状態を維持し、競合企業の市場競争力を削いだ」と厳しく批判した。ただし、③については判断を避けた。
米国の独禁法はシャーマン法、クレイトン法、連邦取引委員会法の3つと、それらの修正法から構成されるが、今回適用されたのはシャーマン法(1890年制定)だ。カルテルなどの取引制限と独占化行為を禁止するもの。 判決文はこちらで閲覧できる(外部サイトに遷移します)。
Googleはすでに控訴する方針で、規制業務担当のリー・アン・マルホランド副社長は「ウェブのパブリッシャーたちは多くの選択肢のなかから、手頃な価格で使いやすく、広告主の収益に直結するGoogleの広告ツールを選んでいるに過ぎない」と声明で述べている。
昨2024年9月に行われた裁判は、3週間という短期間に原告・被告側がそれぞれ証言。11月下旬の最終弁論を経て、今年1月に判決を予定していたが、政権交代の影響もあって延期が続いていた。結果的には、巨大IT企業(ビッグテック)の市場独占に司法当局が厳しい姿勢を示すことになった。
Googleは昨年8月、オンライン検索市場を独占しているとして連邦地裁から独禁法違反の判決を受けている(既報)。是正措置としてOSのAndroidやウェブブラウザのChromeの売却が挙げられており、審議はこの4 月21日に始まったばかり。今回の広告市場における独禁法違反はそれに続くもの。司法省による是正措置はGoogleの広告商品・アドテク事業の売却命令などが想定されている。今後、バージニア州東部地区連邦地方裁判所の主導で審議が行われ、米政府がもくろむ「Google解体」も現実味を帯びてくることになるが、Google側もその都度控訴して法廷闘争に持ち込むものとみられ、実現は難しいとの声も多い。
米国で今回の判決が出た4月17日直前の15日、日本でも公正取引委員会が独禁法違反でGoogleに排除措置命令を行った。Android搭載のスマートフォンメーカーとの契約で自社アプリの初期搭載や競合する検索サービスの排除を不当に要求したとして、独禁法の「拘束条件付取引」にあたると認定し、再発防止と改善状況の報告を求めている。米ビッグテックに公取委が排除措置命令を出すのは初めてだ。
米国ではほかにも連邦政府によるビッグテックを相手取った訴訟がいくつか同時進行している。4月半ばには連邦取引委員会(FTC)が提起したMeta社の独禁法違反訴訟の裁判が始まったばかりだ。FTCはMetaが所有するアプリのInstagramとWhatsAppの事業分割による売却を模索している。同じくFTCはEコマース分野を独占しているとしてAmazonを提訴中だ。これについては、昨年Amazonが提訴撤回を要求し、裁判所が一部を認めている。
また、Apple社のアプリダウンロードサービス「App Store」をめぐる司法省とAppleの訴訟で4月30日、北カリフォルニア地区連邦地方裁判所はApp Storeを外部の決済手段に開放するよう求めた2021年の裁判所の命令に従っていないとして、あらためて同社を独禁法違反と認定。App Storeへの統制を緩めるよう命じた。