記者やディレクターなど報道の実務者のスキル向上とよりよい報道の実現を目指す「報道実務家フォーラム2023」が4月28―30日の3日間、早稲田大学国際会議場で開かれた。報道実務家フォーラムと早稲田大大学院政治学研究科ジャーナリズムコースの主催で、2017年から毎年開催している。今年は47の講演をリアルとオンラインのハイブリッド形式で実施した。
民放onlineは3つの講演を取材。今回は「旧統一教会と地元政治の関係を追求する富山・チューリップテレビ」と題した講演を紹介する。このほか「TBS調査報道ユニットとNEWS DIG好調の秘密とは」は掲載済み、「"タブーなき"選挙報道を考えよう~本当に伝えるべきこと」の講演については後日掲載する。
旧統一教会は地方政治に影響を与えてきたのか――。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と地元政治の関係を追及した同社の報道について、チューリップテレビの松澤光聡記者が講演した。
7月8日に安倍元首相銃撃事件が起こり、その3日後の11日には富山県に住む元信者に取材した模様をチューリップテレビで放送。その素早い報道を可能にした要因として松澤氏は、TBSテレビから出向した武石浩明・報道制作局専任局長の存在を挙げた。過去にTBSテレビで統一教会の問題を取材しており、その知識と経験、人脈を活かし、取材に成功したという。その後、元信者やその家族を連日取り上げた。取材で気をつけていたことは「元信者の証言だけでなく、反対意見を入れることを意識した。県・市議会議員や旧統一教会に対し、都度取材を行った」と話した。
これを皮切りに旧統一教会と地元政治の関係にも迫った。7月21日に自民党の県議会議員32人全員に取材し、このうち4人から関連団体の選挙応援を受けていたとの証言を得た。松澤氏は、議員の当時の反応について「当人たちに問題意識があるようには感じなかった」と語った。また、今年の統一地方選挙については、県議選の候補者57人全員にアンケートを行い、その結果を公表したことを報告。会場の聴講者から「旧統一教会の問題が明るみになり、選挙への影響はあったか」と問われ、「県民、議員どちらにも、"もう終わった話"だという雰囲気があった」と答えた。
新田八郎・富山県知事が2020年の知事選で旧統一教会の応援を受けたことを認めながら、教会と関係を断つことを明言しなかったことにも触れた。その理由について定例会見で質問を繰り返していたところ、新田知事は「印象操作」「偏った報道」と同社の報道を問題視した。これについて松澤氏は「驚いた。どの部分が偏っていたかの説明がなかった」と振り返るとともに「議員が関係を断たないと旧統一教会に"お墨付き"を与え、信者がより強く信じるきっかけを生んでしまう。議員には関係を断つことを明言してもらう必要がある」と力説した。