映画『ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう』が劇場公開 化学物質PFASの問題に声を上げる女性たちを描く

編集広報部
映画『ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう』が劇場公開 化学物質PFASの問題に声を上げる女性たちを描く

PFAS(ピーファス)・有機フッ素化合物による水道水の汚染問題に立ち向かう女性たちを描いたドキュメンタリー映画『ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう』が726日から沖縄・桜坂劇場で先行公開され、816日から東京・ポレポレ東中野ほか全国で順次公開されている。

本作の発端は、2016年に沖縄県による「県民45万人に供給する水道の水に化学物質PFASが含まれていた」との発表に始まる。米国ではすでに、がん、低体重出生などの健康への影響が確認されていた。その深刻さに気づいた女性たちは街頭で訴え、調査や浄化を求める。PFASとは有機フッ素化合物の総称で、水や油をはじく特性をいかし焦げ付かないフライパンや防水スプレー、半導体、泡消火剤などあらゆる生活用品に使われてきた。発がん性など人体への有害性が指摘され、世界では毒性を重く見て規制が進む。PFOS(ピーフォス)、PFOA(ピーフォア)、PFHxS(ピーエフへクスエス)もPFASの一種だ。沖縄では汚染発覚から9年を経てもなお、汚染源の特定すらできない。それは汚染源とみられる基地への立ち入り調査を米軍が拒み続けているから......。本作は、沖縄、米国、イタリアでPFAS問題に立ち向かう女性たちを追う。彼女たちが起こした"波"に希望が見える。

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<2023年1月、ミネソタ州議会で病を押してスピーチを行い、PFASの使用を禁止する「アマラ法」を実現させたアマラ・ストランディさん。法案成立の3日前に命を落とした。>

監督した平良いずみさんは沖縄テレビ放送(沖縄テレビ)でキャスターを務めながら医療・福祉・基地問題などをテーマにドキュメンタリーを制作してきた。PFAS問題では『水どぅ宝』(2022年)、『続・水どぅ宝』(2024年)の2本を制作しており、本作は5年にわたる取材の記録だ。平良さんの映画監督作は、『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』(2020年)に次ぐ2作目で、沖縄テレビを退職し、制作者集団「GODAM沖縄」に合流してから1作目となる。

ポレポレ東中野で816日に舞台あいさつが行われた。平良監督は、「作品タイトルのウナイは沖縄のことばで『姉妹』の意味。性別でくくる考えはないが、この取材で出会った人は女性ばかりだった。世界では圧倒的に女性が声を上げている。男性は社会のシステムに組み込まれすぎて声を上げにくい状況があるのかもしれない。少しでも社会が良い方向に向かってほしい」と作品に込めた思いを語った。沖縄でPFAS問題に声を上げ続けている仲宗根由美さんが一緒に登壇し、本作を見て「ドアップの自分にびっくり」と場内を笑いに包みながら、PFAS問題については「地道に自分ができることをやっていく」気持ちで声を上げたと話した。「祖母は戦争で家族を失い"戦争さえなければ"との思いがある。祖母にとっての戦争と同じように本作の登場人物も"PFASさえなければ"の思いがある」と述べ、PFAS問題の解決のために「英知を集結させてほしい」と呼びかけた。

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<平良いずみ監督㊧と同作に出演した仲宗根由美さん㊨>

平良監督は民放onlineの取材に対し、「PFAS問題をテレビドキュメンタリーで扱ったときは調査報道を意識して制作したが、本作では人の物語として伝えることを意識した」という。「専門知識がなければよくわからないものと思われがちなPFAS問題に注目してほしいし、次世代のために海外の状況を知ってほしい」と、本作への思いを語った。

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『ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう』
監督=平良いずみ
プロデューサー=山里孫存 千葉聡史
音楽=半野喜弘 撮影=大城学 赤嶺信悟 編集=田邊志麻 山里孫存 構成=渡邊修一
製作=GODOM沖縄 製作協力・配給=太秦
文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
2025 年/日本/ 169 106 分】©2025 GODOM 沖縄

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