勢いづく地域連携事業 地元に根差した多彩な展開②

編集広報部
勢いづく地域連携事業 地元に根差した多彩な展開②

ローカル各局が地元の自治体や企業などと協力し、地域の活性化や課題解決に取り組む連携事業。ここでは民放onlineが地上テレビ社に行ったアンケートに基づき、いくつかの事例を紹介していく。①はこちらから。


仙台放送は2004年から、テレビ番組『川島隆太教授のテレビいきいき脳体操』(月―金、5・20―5・25)を放送している。東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授が03年、報道番組『CATCH』に出演したことをきっかけに、継続的に川島教授の脳科学に関する研究を発信することにした。番組は「見るだけで脳を活性化できる」内容で、放送回数は4,600回超(9月22日時点)。アジア地域を中心に海外でも放送されている。番組を担当する仙台放送の太田茂氏は「陳腐な内容にならないよう日々の研究成果を取り入れ、毎日違う内容で制作している」と工夫を語る。

<『テレビいきいき脳体操』の番組宣伝CM

同社はこれまでに全国ネット番組や講演イベント、老いをテーマにしたドキュメンタリー映画『僕がジョンと呼ばれるまで』(2014年)などに取り組んでおり、時代のニーズに合わせた手段で加齢に関する研究の結果を発信してきた。20年からは「運動技能向上トレーニング・アプリ」のサービスを本格的に開始。保険会社や物流などの法人・団体向けにアプリを販売し、保険契約者や従業員が利用している。現在では利用者は100万人を超えたという。

太田氏はアプリ展開の目的について「『車がなければ暮らしていけない地域』の放送局として、全てのドライバーの"安全運転寿命"を伸ばし、交通事故という社会課題の解決を目指している」と話す。実際に事故の減少や、物流現場でのミスの削減などの成果も出てきている。また、アプリの利用料の一部が東北大の研究費に還元されることで、社会課題の解決に取り組みながらビジネスとしての成果も出ているという。

継続的に共同制作番組に取り組んでいるのは、長野放送(NBS)NST新潟総合テレビ(NST)。両局は毎年10月、特別番組『スマイルこれダネッ!』(=写真)を共同制作している。NBS『土曜はこれダネッ!』(土、18・00―19・00)とNST『Smile Stadium NST』(土、18・00―18・56)がタッグを組み、両県を互いにアピールすることが目的。隣県の2局が2008年に40周年を迎えるにあたり、看板番組同士をコラボさせたことから毎年、同特番を放送することになった。

両局の営業力を集結させることで総売上の最大化を図る。また、コスト面で単独では実現が難しい企画にチャレンジすることで、制作力の向上も目的にしている。企画にあたり、制作や編成だけでなく東京支社の営業担当も集まる合同会議を開き、両番組の個性をどう活かすかなどを検討。営業現場は普段関わることの少ない企画立案に参加することで、番組制作に対する意識や企画力の向上にもつながっている。

2局は「VTR制作や撮影の手法といった細かな部分で両局に違いがあるため、参考になることがある。そこで得たノウハウを活かして自局の番組制作力の向上につなげたい。また、自局の放送エリア外をネットする番組の発信業務の経験を積む良い機会にもなっている」とする。年1回の共同特番として認知度は上がってきており、昨年は両局とも世帯視聴率で2桁を超え、手応えを感じているという。今年は10月21日(金)に放送する予定だ。

9月23日、佐賀県・武雄温泉駅と長崎県・長崎駅間に開業する西九州新幹線。これを記念したコラボレーションが、テレビ長崎「マルっと!」(月―金、16・50―19・00)とサガテレビ「かちかちPress」(月―金、16・15―19・00)の間で行われた。その名も「かちかちExpress GO!GO!マルっと中継」。2021年11月を皮切りに、今年の3月まで毎月組まれたこの企画では、両番組の出演者による沿線各地のリポートを同時放送するとともに両局のスタジオもつないで交流し、開業の機運を盛り上げた。

リポートでは、長崎駅、武雄温泉駅、諫早駅などを軸に、博物館やスイーツ、グルメなどのほか、沿線の祭り会場の模様などを取り上げた。プロジェクトを担当したテレビ長崎メディア推進局業務担当局長の城谷英知氏は、「沿線自治体からの評価は高かった。長崎大学出身のサガテレビ・平川邦明アナウンサーと、佐賀市出身のテレビ長崎・中村葉月アナウンサーの交流、番組の相互乗り入れもあり、視聴者からの反応も良かった」と手応えを話す。

両局によるコラボレーションのシリーズ企画はこれが初めて。「かちかちPress」プロデューサーの前田智恵美氏は、「もともと両番組の担当者間で『何か一緒に企画を』と話していた」といい、開業にまつわるテレビ企画を両県自治体などに提案したところ、長崎新幹線・鉄道利用促進協議会の助成事業として実施に至った。開業当日の23日にはあらためて両番組で同時コラボ放送を実施し、沿線や街の様子を伝えることとしている。

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