変わるホワイトハウスのプレス対応 記者室に"ニューメディア"を開放 ペンタゴンも大手を締め出し

編集広報部
変わるホワイトハウスのプレス対応 記者室に"ニューメディア"を開放 ペンタゴンも大手を締め出し

ホワイトハウスの記者会見室の最前列席をSNSインフルエンサーなどの"ニューメディア"に開放、国防総省本庁舎(ペンタゴン)の記者室から政府に批判的な大手メディアを締め出し、政府機関に各種メディア契約を全て解約するよう指示――大統領就任早々、トランプ新政権によるメディア対応が大きく変化している。

1月20日の就任式から8日たった1月28日、ソーシャルメディアのインフルエンサーやコンテンツクリエーター、ブロガー、ポッドキャスターといった"ニューメディア"にホワイトハウス会見室の最前列席を確保するとキャロライン・リービット報道官が発表した(冒頭画像は同報道官の会見要旨を伝えるホワイトハウスの公式サイト)。27歳の歴代最年少で報道官となった同氏はこの日、独立系ジャーナリストらにオンラインフォームでホワイトハウスへの記者登録をするよう呼びかけ、翌日には7,400件もの申請が寄せられたという。

トランプ大統領は選挙期間中からテレビなど主流メディアの取材を拒み、ポッドキャストやソーシャルメディアを積極的に活用してきた。リービット報道官は、マスメディアへの国民の信頼度は低下し、特に若者層の情報源が従来のテレビ・新聞からポッドキャストやブログ、ソーシャルメディアにシフトしていることを強調。「トランプ政権下の会見室は従来メディアだけでなく全てのメディアに話しかける場とする」と話した。この日、同報道官が最初に受けた質問もオンラインメディアAxiosと、極右ニュースサイトのBreitbart(ブライトバート、2007年創設)からのもの。いずれも「従来メディア」の枠外と言える。

その後、2月14日にホワイトハウスはAP通信が大統領執務室と専用機エアフォース・ワンに出入りすることを無制限で禁止した。トランプ大統領が就任初日に「メキシコ湾」を「アメリカ湾」と改称する大統領令に署名して以降も、AP通信が「メキシコ湾」の呼称を続けていることへの報復措置とみられる。

続いて、元FOXニュースの司会者ピート・ヘグセス国防長官が議会で承認された1週間後の2月1日、ペンタゴンの広報室は庁舎内に設けている記者用の専用スペースからNBCニュース、ニューヨーク・タイムズ、NPR(National Public Radio)、Politico(ポリティコ)の大手4メディアを退去させ、代わりに右派メディアのOne America News Network、ニューヨーク・ポスト、ブライトバート、ハフポストを追加すると発表した。1年ごとに常駐メディアを交代させていくローテーション方式を採用するという。 従来メディア側は抗議したが、2月7日にはそれまでのCNN、ワシントン・ポスト、The Hill(ザ・ヒル)、The War Zone(ウォーゾーン)に代わって、右派メディアのNewsmax、Washington Examiner(ワシントン・エグザミナー)、The Free Press(ザ・フリープレス)、Daily Caller(デイリー・コーラー)が追加された。締め出されたメディアは今後もペンタゴンへのアクセスは可能だが、庁舎内の記者用スペースには常駐できなくなり速報力が削がれるとみられる。

さらに2月6日、連邦政府の財産や公文書管理、資材調達・供給などを行う一般調達庁(General Services Administration=GSA)に対し、ホワイトハウスが「(政府機関は)Politico、BBC、E&E(ポリティコの子会社)、ブルームバーグとのメディア契約を破棄する」「GSAは全てのメディア契約を本日付で破棄する」よう指示したとAxiosがスクープした。 発端はワシントンD.C.で広く利用されている企業・団体・政府機関向けの政策追跡有料サービス「ポリティコ・プロ」にGSAが数百万㌦の契約金を支払っていることをイーロン・マスク氏率いる米政府効率化省(DOGE)が指摘し、バイデン前政権によるポリティコを含む"反トランプ"メディアへの不正な資金提供だと糾弾したこと。

ポリティコ・メディアグループはこれに対し「不当な疑惑だ。2007年の創業以来18年間、政府基金や助成金など一切受け取ったことはない完全な民間企業だ」と声明を発表。今回標的とされた「ポリティコ・プロ」はデジタルニュースの「ポリティコ」とは別ものであることも強調し、政府機関は正当な手続きを経て有料契約していると訴えた。

公共放送局への連邦交付金廃止を目的としたPBSとNPRへの調査に続き、新政権による右派メディアの優遇、政府に批判的なメディアへの抑圧は進むものとみられる。

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