"全肯定"で受け止める~学生向けラジオ番組パーソナリティ座談会 ラジオをみんなの居場所に②

編集部
"全肯定"で受け止める~学生向けラジオ番組パーソナリティ座談会 ラジオをみんなの居場所に②

座談会当日の模様
(左上:三浦ちあきさん、右上:やきそばかおるさん、左下:大窪シゲキさん、右下:辻満里奈さん)


大窪シゲキさん(広島エフエム「大窪シゲキの9ジラジ」メインパーソナリティ)

三浦ちあきさん(和歌山放送「WA!ERA」元メインパーソナリティ)

辻満里奈さん(RKB毎日放送アナウンサー、「カリメン」パーソナリティ)

司会:やきそばかおるさん(ラジオコラムニスト・ライター)


前編、中編、後編の3回に分けて掲載します。今回は中編です。

コロナ禍での企画

やきそば 「WA!ERA」の、「マイクを持て、カメラを止めるな!放送部員のための自主強化ラジオゼミ」企画のきっかけを教えてください。

三浦 学生の生出演で成り立っている番組なので、20年春、コロナの影響で番組が止まりそうになりました。スタジオに学生を呼ぶことができない中、NHK杯全国高校放送コンテストの和歌山県大会に向けてがんばっていた番組出演者の放送部のみんなに何か届けたいと企画しました。wbsのアナウンサーや技術担当など計6人に参加してもらい、放送部員の参考になりそうな話、例えばスポーツ実況が得意なアナウンサーには運動会のリレー実況の極意について、技術の人にはマイクの使い方や選び方について話してもらいました。何より感謝したいのは、社員の皆さんが県内の高校生のために時間を割いてくれたこと。局を挙げての一大プロジェクトになり、聴き逃した人にも聴いてもらえるよう、ウェブサイトに音源を残すことにしました。

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<三浦ちあきさん>

やきそば 「9ジラジ」では公開形式で卒業式の企画をしてきましたが、コロナ禍で20年と21年はスタジオから生放送しましたね。

大窪 「できないからやーめた」でなく新しい方向を示すのは、大人がやるべきことだと思っています。ピンチはチャンス、チャンスはチャレンジ、チャレンジはチェンジ。「仕方がないから」ではなく「スタジオでやるならユーチューブで映像も流そう!」と新しいことに挑戦した結果、民放連賞の最優秀もいただき、9ジラーちゃん(番組リスナー)も喜んでくれました。

 毎年開催しているイベント「RKBラジオまつり」をオンラインで行いました。「カリメン」は配信に慣れた若いリスナーが多いので、チャット欄に応援のコメントをたくさん書いてくれました。最初は「今年もオンラインか......」とネガティブな気持ちでしたが、もしかしたら実際のイベントよりも多くの人に楽しんでもらえたかもしれません。間口を広げることがリスナーを増やすことにもつながるので、コロナ禍の開催は意味があるものだったと思います。

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<大窪シゲキさん>

大窪 ラジオにしかできないことってたくさんあるような気がします。「9ジラジ」では吹奏楽部応援プロジェクトを立ち上げ、県内の吹奏楽連盟や先生に送ってもらった音源をラジオで流したら、学生だけでなくOB・OGも喜んでくれました。

先生から「黙食で静かなお昼休みなんです」と聞いた学校には、5分くらいのミニ番組を作って流してもらいました。

やきそば 学校との信頼関係が大事ですね。

大窪 積み重ねてきた年数もありますが、信頼関係を築くことと真摯であることは本当に大切。僕たちは取材が終わったらお礼の電話をして、編集した音源を手紙と一緒に全ての学校に送ります。そうすると信頼関係も得られるし、次の取材もしやすい。スポンサーにも実績を説明してちゃんと提案できます。先生との信頼関係も大事で、番組には先生と電話をつなぐコーナーもあります。

広島県知事にも出演してもらいました。県のトップが「10代のみんな、我慢してくれてありがとう。引き続き感染対策してね」と呼び掛けると、重みがあります。

リスナーへのアドバイス

やきそば 10代にアドバイスをするときに心掛けていることはありますか。

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<辻満里奈さん>

 リスナーの"ちょっと年上の近所のお姉ちゃん"を目指しています。10歳頃からずっと書いている日記を見返すと、リスナーと同じようなことで悩んでいるんです。テスト前なのにゲームをしちゃうとか、友だちが自分と同じ子を好きになってどうしようとか。リスナーより少し早く10代の多感な時期を経験している分、自分の経験や反省を踏まえて、当時の気持ちで話すことを意識しています。

大窪 僕は全肯定スタイルです。どんなことも「そうだよね」と一回受け止めて、時には同じことを繰り返します。相手が心を開いたら、自分が本当に言いたいことを入れて話すようにしています。

ラジオDJを長くやっていて気付いたのは、DJの仕事は喋ることではなく聞くこと。リスナーと一緒にうなずくことを心掛けています。

三浦 私もこれまでは上手に喋ることを考えていましたが、最近は学生の話をたくさん引き出す方が大事だと思い、必ず最後まで聞くようにしています。

大窪 ラジオって、家族に話しにくいことを話せるメディアだと思うんです。約15年、学生の話を聞いていますが、恋愛の悩みは「好きな人に話しかけられない」「告白ってどうすればいいですか」など根本は変わっていない。匿名で顔が見えないから、悩みだけじゃなくうれしいことも教えてねと言っています。

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<やきそばかおるさん>

やきそば アシスタントDJもアドバイスをしていますね。

大窪 「9ジラジ」は元々1時間番組で、2時間になる際に若い感性もラジオに入れようと、20代の子たちをアシスタントにつけました。リスナーの悩みには、いくつも意見があった方が選択肢が増えます。正解はそれぞれなので、例えば月曜日に届いたお悩みに自分とアシスタントDJが意見を言ったあと、僕はそれを他の曜日のゲストやスタッフ、リスナーにも聞きます。いろいろな意見を全部尊重して、最後に「お好きなのをどうぞ」とリスナーに提供するため、今は大人数でやっています。

 学生以外のリスナーは意識されますか?

三浦 和歌山は農業県なので、農作業や運転中に聴いている人も多いです。番組を始めた頃は、年齢差のある学生やリスナーとの向き合い方に悩みました。そのとき、番組ディレクターが「三浦さんと同世代や少し上のリスナーが多いと思うので、番組に出演してくれる高校生とリスナーのつなぎ役になってほしい」と言ってくれました。リスナーの知らない、今の高校生が考えていることや夢中になっていることがたくさんあるので、私はリスナーと高校生の懸け橋になりたいです。

大窪 大人が聴いても楽しい10代の番組を作ることが大事だと思います。「9ジラジ」の裏テーマは、大人が聴いて元気になったり、周りの10代に寄り添ってみようと思えること。夢のある学生に、経験のある大人が現場からアドバイスをくれるとありがたいです。10代の番組って聴いているだけでピュアな気持ちになれますよね。それが大人への一番のメッセージだと思います。

後編に続く)

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