【50回目の「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」】九州朝日放送 "おかげさま、おたがいさま"のアニバーサリー

米嵜 竜司
【50回目の「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」】九州朝日放送 "おかげさま、おたがいさま"のアニバーサリー

1975年にニッポン放送、STVラジオ、九州朝日放送の3局で始まった「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」。目の不自由な方たちが安心して街を歩けるように、「音の出る信号機」などの基金を募るキャンペーンは、現在全国11局で行われている。民放onlineは、初回から同キャンペーンに取り組み50回目を迎えたニッポン放送STVラジオ、九州朝日放送の3局の担当者に寄稿いただいた。

今回は、九州朝日放送編です(冒頭写真は、左から順にメインランナーを務めた岡田理沙アナウンサー、和田侑也アナウンサー、細谷めぐみアナウンサー)。


「第50回 KBC ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」のプロデューサーを担当した米嵜竜司です。今回は、プロデューサーとしての「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」(以下、Mソン)の経験や取り組みについてまとめます。

Mソンのプロデューサーを担当したのは第48回から3年連続3回目。プロデューサーになることが決まってから、おそらく50回目も担当することになるだろう......と、何ともいえない勝手なプレッシャーがずっと心のどこかにありながら3年間、毎日を過ごしてきました。多くの方々のご尽力のおかげで、記念すべき第50回を無事に終えることができ、今は大きな達成感と開放感を覚えています。

独自のテーマを設定する理由

当社ではMソンで掲げる「目の不自由な方へ音の出る信号機を」とは別に、毎年独自のキャンペーンテーマも設けています。第48回は「一歩一歩」、第49回は「未来つむいで」、そして今回の50回目は「おかげさまでありがとう、おたがいさまでありがとう」でした。

この"毎年のキャンペーンテーマを設ける"という取り組みは、ここ十数年にわたり行っています。Mソンのキャンペーン期間は11月1日から1月31日ですが、特に11月下旬から12月23日までは、当社のワイド3番組がテーマに沿ったMソン企画を展開します。そして、12月24日正午からの24時間特別番組の2日目(25日)に発表するのが恒例となっています。Mソンは多くの社外スタッフやタレントの皆さんの力をお借りします。さまざまな放送局や現場で活躍する方が多い中で、Mソン企画をお願いすることにより、半ば強制的にテーマについて考えてもらっています。これは少しでも同じ"思い"で出演者・スタッフ一同が24時間特別番組を迎えられるようにと引き継がれているものです。また、普段聴いていただいているリスナーの皆さんにあらためて思いを寄せるきっかけになるとともに、若手の出演者やスタッフの成長にも一役買っています。

今回、ワイド3番組が行ったMソン企画を簡単に紹介します。

①午前中のワイド番組『アサデス。ラジオ』(月~金、6:30~12:00)では、しゃべり手修行中のADクロちゃんが全盲の中学3年生の少女に1カ月という短い期間でピアノの指導を受け、12月25日のイベント会場で師弟の連弾を披露する「もしもピアノが弾けたなら」

②2023年に40周年を迎えさらに勢いに乗るお昼のワイド番組『PAO~N』(月~金、13:00~16:00/番組プロデューサーの寄稿はこちら)は、長寿番組ならではということで、これまでMソン番組企画に出演した目の不自由な方たちの"その後"について再インタビューする「50(ご)~ぶさたしてます」

③夕方のワイド番組『ハッピーアワー』(月~金、16:00~17:50〔月、~17:55〕)からは、地元彫刻家のお力添えにより開催した社内展覧会「触れる彫刻展」

挑戦、振り返り、イベントというさまざまな切り口の企画で、各ディレクターが番組の特色を活かしながら取り組みました。

★募金ステーション.jpg

<ゆめタウン博多で寄付を募る募金ステーションでは
『PAO~N』の沢田幸二さん(前列右から3人目)も>

リスナー同士の交流にもつながった特別企画

また、番組企画とは別にMソン50回記念特別企画として「KBC ラジオ・チャリティ・ミュージックソン・トレーディングカード募金」、略して「KMトレカ募金」を行いました。キャッチコピーは「50回目記念で50種類、1枚につき500円の寄付ができるKMトレカ募金」。当社のパーソナリティや番組など50種をカード化し1枚1,000円のランダム形式でネット販売。そのうち製作費や送料などを除いた500円を「通りゃんせ基金」へ寄付するという企画です。カードは各パーソナリティのプロフィールや手書きメッセージのほか、遊び心で10項目のアビリティチャート(能力値)が書かれています。目の不自由な方にも楽しんでもらえるように名前の点字シールを貼り、カードの隅にある二次元コードをスマホで読み込むとパーソナリティの声でカードの内容を読みあげる仕様にしています。

当社の番組を楽しみにしてくれているリスナーの皆さんに喜んでもらいながら、寄付につながれば――という思いで企画しました。Xでカードの"開封式"をアップしてくれる方や、個人同士でトレードする方が続出。リスナー交流のきっかけになるなど楽しんでもらえたようで、本当に良かったと思っています。これらは寄付額500円を捻出するため、写真使用とナレーション収録を無償で協力してくださった出演者の皆さん、そして数千枚のカードへの点字シールの貼り付けや袋詰めなどを手伝ってくれたスタッフのおかげです。

リスナーに伝わるのは「気持ち」

そのほかに、2023年秋から密着取材を行い、テレビやラジオで特集を重ねていた内容をまとめた30分番組『いのちのチカラ~目の不自由な夫婦の育児日記』や、ライブ配信サービス「SHOW ROOM」とのコラボ企画で「Mソン出演歌手オーディション」「募金リーダーオーディション」などにも挑戦しています。

★グランドフィナーレ.jpg

<出演者が勢ぞろいしたグランドフィナーレ>

その中でも心に残ったのが「全盲の三味線民謡師範・藤本秀紫祐さん 演奏・歌披露」(18時台に放送)です。2024年11月上旬、当社宛てに「80歳の傘寿の記念にKBCラジオに出演させてもらいたい」という内容のFAXが届きました。すぐにご自宅にうかがったところ、藤本さんはとても明るい女性で、「毎年Mソンを楽しみに聴いている」「Mソンに出演できるなんて夢みたい」「生きる目標ができて本当にうれしい」と素敵な笑顔で話をしてくれました。心からラジオを必要としてくれている方の生の声を聞くことができ、うれしいやらありがたいやら気が引き締まり過ぎるやら、何ともいえない複雑な気持ちになりました。

「緊張してうまくできないかも」と不安を口にしていた藤本さん。しかし、12月24日の特別番組では、初めてのラジオ出演とは思えないほど堂々とした演奏と歌唱を披露され、その後のインタビューで"ラジオに対する思い"を熱のこもった言葉で話してくれました。その思いに目頭が熱くなってしまいました。「正しい言葉」と「伝わる言葉」。どうやったらリスナーの皆さんに伝えたいことを伝えられるのだろうかとモヤモヤしている中で、やっぱり最後は「気持ち」なんだなとあらためて気付かされました。

ここからは個人的な話をさせてください。私の父は熊本を拠点に芸能活動を行っていた芸人・ばってん荒川です。どんなに忙しくても日本国内の仕事であれば必ず家に帰ってくるような人でしたが、12月24日だけは帰宅せず、子ども心に「なんでクリスマスイブはいつもいないんだろう」と思っていました。そして、「あっ、イブに家にいなかったのはMソンで泊まりの仕事だったからなんだ」と気付いたのが19歳の時。私が第21回のMソンで、12月24日に雪が降るJR小倉駅前の高架下でブルブル震えながらアシスタントディレクターのアシスタントのような仕事をしていた時でした。父は他界していて真偽は分かりませんが、古い白黒写真を見ると1回目から出演していたと思われます。偶然にも? 親子2代でMソンに関わることができたことを誇りに思い、これからもラジオを盛り上げていきたいと考えています。

最後に、「第50回 KBCラジオ・チャリティ・ミュージックソン」に携わってくださった皆さまに心より感謝申しあげます。ありがとうございました。

★Mソン資料写真_ばってん荒川.jpg

<1970年代のMソンより
ハーモニカを演奏する人の㊨がばってん荒川さん>

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