30歳以下の放送局員に「これから」を考えてもらう企画「U30~新しい風」(まとめページはこちら)。24回はテレビ宮崎の竹之内映美さんです。放送局に入社し、本社と東京支社で営業の仕事に携わる中で感じる思いを語っていただきました。
テレビに影響された学生時代
テレビ好きな家庭に生まれた私は、幼い頃から新聞のテレビ欄を見ることが日課でした。「今日は何の番組があるのだろう」と毎朝ワクワクしていたあの頃、将来タイムテーブルを売る仕事に就くとは思ってもいませんでした。
思い返せば私の人生は、テレビのコンテンツに影響を受けながら歩んでいるのかもしれません。小学3年生のときにドラマ『のだめカンタービレ』に出合い、音大生になることを目標に中高生時代はピアノに励みました。しかし現実は厳しく、壁にぶつかった高校3年生を目前にした春休み、進路に真剣に向き合っていた矢先、偶然ついていたテレビで春の甲子園の試合結果を伝える番組を見ました。学校名の書いてあるユニフォームを身に着けた高校球児が、泣きながら校歌を歌っている姿を見て「彼らを応援したい!」と、進路を180度変更。上京して六大学野球のチアガールになることを決めました。
ためらいなく、テレビに影響されながら生きていく娘をいつも寛容に受け入れてくれた家族には感謝しかありません。テレビ局に就職したことも、私のように少しでも誰かの人生を変えるきっかけを作れたらと思ったことがきっかけです。なんとなく面白そう、そう思ったテレビの仕事ですが、その多角事業には今もなお、驚き続けています。
営業部で働く中での思い
私は入社から5年以上、営業部で仕事をしています。宮崎の本社で3年、東京支社で勤務して2年がたちました。入社当初は営業の仕事に対してよいイメージはあまりなく、CMの出稿金額を少しでも多く、シェアを少しでも高く、広告会社やスポンサーの懐に入るまで追い続ける"昭和のサラリーマン"のようなイメージを持っていました。もちろん、会社の売り上げや社員の給料を稼ぐ役割が課せられているので、人間関係を築くことや売り上げを積むことは重要です。私の交渉一つで売り上げが変動し「私のせいで〇人分のボーナス分が......」といまだに落胆する日もあります。
当社はローカル局でもおそらく珍しいのですが、新人を中心に本社の営業部では飛び込み営業をやっています。友人や家族に言うと驚かれますが、県内のあらゆる会社に訪問し、「テレビCMとは」という話を聞いてもらうのです。私の感覚として、実際に話を聞いてくださるのが10社に1社、その中で興味を持つのがまた10社に1社、つまり100社訪問して1社決まるか否かくらいの確率です。
「この時代、テレビCMをやったところで......」という意見もある中、「あなたが訪問してくれたからCMについて知ることができました」と言ってもらえることや「君が熱心に通ったから」と、成果を感じる場面もありました。正直、新規スポンサーが取れない時期は、このまま給料をもらっていいのだろうか、他の部署は人手不足と言っている中、私は会社にいていいのだろうか、と後ろ向きになる日もありました。それでも、新規開拓を経験したからこそ、出稿してくださるスポンサーへのありがたみが増し、より良い提案をしたいという気持ちが芽生えたと思います。
新たな取り組みをとおして
テレビ局の事業は多角化していると述べましたが、その中でも一番幅広い仕事ができる部署が営業部であると私は感じています。現在、キー局でもローカル局でも放送収入以外の新規事業への挑戦が行われています。私はその枠組みにとらわれず、営業部が他社と組んで0から1を生み出すために挑戦する企画も新規事業なのではないかと思っています。これまでの営業経験の中で携わった"放送収入の枠組みを超えた企画"を紹介します。
2022年2月に発表された、2021年の家計調査の結果で、宮崎市が餃子の購入頻度、支出金額で初めて全国1位を獲得。そのニュースが全国で話題となりました。宇都宮市と浜松市という2強との戦いを制したあの年、私は宮崎市ぎょうざ協議会の会長・渡辺愛香さんをはじめとした宮崎ぎょうざに関わる皆さんのお話を聞く中で、「何かこのタイミングで当社としてアクションができないか」と当時の上司と相談。冷凍餃子の流通を促進する企画を立案し、実施しました。2月の結果発表のタイミングで地元スーパーに冷凍餃子コーナーを設置してもらい、当社がCMを制作、放送するものです。これまでスーパーでの取り扱いがなかった餃子店が商品を卸すために会社同士をつないでもらいました。
<地元スーパーに設けられた餃子コーナー>
良いタイミングが重なり運よく実施に至りましたが、この企画がきっかけで取引を始めた餃子が、その後も冷凍コーナーに陳列されているのを見たとき、「自分のアクションが形として残っている」という達成感を味わえました。
2つ目はこれまでに2回実施している20~30代の女性限定イベント「Miyazaki Premium Night」です。これは私が東京支社に異動した2023年から、本社の営業、編成と組んで実施しました。宮崎県内の女性を結婚式会場に招待し、美容家、タレント、モデルをゲストに呼び、トークショーを実施、スポンサーから提供いただいたサンプリング商品をプレゼントする企画です。イベントを当社番組やCMで告知して参加者を募集。応募や当日の施策も当社のアプリを使って実施しました。宮崎でこうした女性限定のイベントは今までなく、こんなにも宮崎県内に女性がいるのかと、私自身も驚きました。
<「Miyazaki Premium Night」の会場の様子>
東京のスポンサーに、宮崎の女性たちへというターゲットを絞ったイベントの企画提案をしていく中で、宮崎というローカルエリアでこのようなイベントがあるというアピールになりました。東京支社では普段、広告会社が間に入る仕事が多い中、直接スポンサーとやり取りも行い、当社の存在を知ってもらうきっかけにもなっていると感じます。また、同時に宮崎県の女性たちがこのイベントで笑顔になっている姿を見られたこともうれしかったです。
<「Miyazaki Premium Night」の会場にて筆者㊨と
後輩のオカファー・エニス・豪アナウンサーのパネル>
テレビ局の"営業"の範囲は変わる
営業部にいると社外の方と関わることが多く、特に東京支社に来てからは当社というより、「宮崎県自体を少しでも知ってもらいたい!」という気持ちで働くようになったと思います。また、東京支社で営業をしていると全国の放送局の方と知り合い、一緒に仕事をします。
「テレビ離れ」「広告予算のデジタル移行」と、そのような声も耳にしますが、まだまだテレビCMのもたらす効果は大きく、広告会社の皆さまも面白い施策を次々に考えてくださいます。また、CMに限らず、テレビ営業の範囲も時代が変わる速さに比例してますます広がっています。私たち"営業マン"がテレビの可能性を信じて動き続ける限り、テレビ局の未来は明るいと私は思っています。