ビデオリサーチ(VR)は11月27日に「VR FORUM 2024」を東京ミッドタウンホールの会場とオンラインを併用して開催した。「コンテンツから拡がる"その先"へ」と題し、全6セッションを通じて、コンテンツビジネスの現在地とこれからの展望を議論した。本イベントがリアルで開催するのは5年ぶりで、配信も含めた参加者のユニーク数は4,700人を超えた。
特別会談「これからのコンテンツビジネスと、"その先"」(=冒頭写真)では、TBSテレビ社長の龍宝正峰氏、dentsu Japan CEO兼電通代表取締役社長執行役員の佐野傑氏、VR代表取締役社長執行役員の石川豊氏が登壇。龍宝氏と佐野氏が自社の取り組みを語った後、石川氏が設定したテーマをもとに議論を行った。
龍宝氏は、6月の社長就任時にやりたいこととして社員に送ったメッセージ"TVを強くする"を示したうえで、「生活者、広告主、広告会社にとっても『テレビは価値あるメディアだ』とさらにアピールしたい」と語った。そして、「"Tele Vision"で見ることだったテレビの意味を、"Timeless Value"でコンテンツを提供することに広げる」と説明。コンテンツには番組だけではなく、生活体験も含まれ、それを表す同社の最近の施策として、今年8月に公開した映画『ラストマイル』や『ラヴィット!』の大型音楽イベントなどを紹介した。そのうえで、「コンテンツのベースには、放送局であるという圧倒的信頼に基づくブランド力」があるとして、「それがテレビの最大の価値」だと述べた。
<TBSテレビ・龍宝正峰氏>
続いて佐野氏が、dentsu Japanは「Integrated Growth Partner(IGP)」を目指しているとして、「パートナーと持続的な成長を遂げながら社会に活気、活力を提供する存在になりたい」と発言。コンテンツ領域についてはスポーツとエンターテインメントが重要であり、海外の競合社にはない特徴的なものと説明した。そして、コンテンツビジネスで重視している視点として、▶熱狂、▶社会的価値、▶共創関係、▶エコシステム――を挙げ、「Jリーグ KICK OFF!プロジェクト」や「北海道ボールパークFビレッジ」、次世代のクリエイターを支援する「House of Creators」などの具体的な事例を紹介した。
<dentsu Japan・佐野傑氏>
その後、石川氏が設定したテーマに対して両氏が考えを述べた。コンテンツビジネスに注力する意義について佐野氏は「IGPのビジョンに合致していることに加え、マーケティングにおいても人の心を動かせるものであるから」と語った。龍宝氏は「地域創生・地域密着」について、TBS系JNN28局のニュースサイト「TBS NEWS DIG」を挙げて「ローカル局の一番の武器はそのエリアのニュースを発信できること」として、「NEWS DIG」のユーザー数の増加は、「ローカルのニュースを活き活きと発信できているから」と分析。全国ネットでは扱われない地元のニュースでも「NEWS DIG」を通じて注目され、拡散されると紹介し、「ローカル局と一緒に取り組むことで可能性を広げられる」と話した。そのうえで、ブルームバーグ・メディアとタッグを組みビジネス・金融ニュースを配信する「TBS CROSS DIG with Bloomberg」もスタートしたことに触れ、「世界にもチャレンジする」と語った。
<ビデオリサーチ・石川豊氏>
最後に、これからのコンテンツビジネスをさらに盛り上げていくために必要なことを問われると「制作者にお金が回る仕組みを作ることと、世界市場を見据えること」(佐野氏)、「コンテンツの力で、世の中にムーブメントを起こすことを意識する。その先にビジネスがないとサステナブルではないので、広告主の皆さまに強く支援いただきたい」(龍宝氏)とそれぞれ語った。
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「地域資源でチャンスを創れ!ローカル局の挑戦」のセッションでは、長崎国際テレビ取締役営業編成局長の筑紫浩一郎氏と北陸朝日放送編成局長の金子美奈氏が登壇、VR執行役員兼ネットワークユニットマネージャーの合田美紀氏のコーディネートで、地域の人口減少やPUT低下に対する取り組み事例の紹介やローカル局の使命を語った。
筑紫氏は、人口減少に歯止めをかけるために、交流人口を生み出すことを目的としたイベント「DEJIMA博」について説明。食と遊びのイベントとして2014年から始め、7回目からは特別協賛を得るまでに成長したと紹介した。また、22年からは子どもを対象として、長崎市の施設を使用した「こどもでじまはく」もスタート。「コロナ禍に誕生した市の施設の利用促進に先陣を切って取り組み、地域貢献ができた」と語り、「営業面でも"子どものため"という趣旨で賛同を得られ、協賛を得やすいコンテンツ」だと明かした。23年からは、アミューズメントに触れる機会のない離島や市街地の子ども向けに「こどもでじまはく」の出張型イベントも開催。初年度に実施した離島の自治体から今年度は予算が付くことになり「やり続ければ報いがあると感じた」と振り返った。
<長崎国際テレビ・筑紫浩一郎氏>
続いて、金子氏が石川地区民放テレビ4局共同キャンペーン「#WAKUをこえろ!」(民放onlineの取材記事はこちら)を紹介。22年にSNSでの展開からスタートし、同年12月にはローカルニュース内で4局同時生放送、23年は各局の看板番組でのコラボや地域貢献をテーマに石川県のイベントを盛り上げた。合田氏から日頃はライバル関係の4局が仲良くできるのかを問われた金子氏は、最初は様子をうかがう感じはあったと明かしつつ、「課題も目標も同じで、あっという間に仲良くなり、プロジェクトを終えることの手応えや達成感は1局のときよりも大きく、1×4以上のものがあった」と応じた。また、24年1月の能登半島地震を受け、共通のメッセージCMを制作し、2月1日から放送。加えて、それぞれの自局にゆかりのある著名人が出演したメッセージCMの制作も行い、4局で素材を共有して現在も放送している。金子氏は「4局で連携すると突破力がある」と語った。
<北陸朝日放送・金子美奈氏>
このほか、地域資源を活かした取り組みとして、石川県の強みである文化施設に着目したデジタルコンテンツ制作(金子氏)や、今年10月に開業した長崎スタジアムシティのオープニングイベントを4局で盛り上げた事例(筑紫氏)などが紹介された。
<ビデオリサーチ・合田美紀氏>
最後に、合田氏からローカル局の使命を問われると「自治体、地元企業などの課題解決に役立ちたい。長崎のコンサルティング企業になりたいという思いで、マスではなくプロモーション企業として活動することがローカル局のミッションと考える」(筑紫氏)、「地域の課題の中にチャンスがある。あえて飛び込み、地域の皆さんとともに課題解決に取り組むことが重要。社内や自治体、企業、県民一人ひとり、ときにはライバルとつながることで自社だけでは描けないストーリーを描ける」(金子氏)とそれぞれ語り、締めくくった。
このほか、TBSテレビ『ラヴィット!』、フジテレビジョン『新しいカギ』の制作者が番組立ち上げの経緯や視聴者とのつながり、テレビの強みなどを語ったほか、アニメコンテンツの事業化や利活用についてなどのセッションが行われた。
なお、本イベントの特設サイト(外部サイトに遷移します)で、12月26日(木)正午までアーカイブ配信を実施している。