11年目の東日本大震災(福島編)

編集広報部
11年目の東日本大震災(福島編)

岩手編宮城編に続き、東日本大震災を被災県の各局が特番などでどのように伝えたかを特集する。今回は、福島6局のアンケート結果をまとめた。取材の継続や深掘りの難しさに直面しながらも、福島の現在を見つめ続けようとする姿勢がうかがえる結果となった


テレビユー福島は3月11日、特番「2022現在地~地域から問う」を夕方に組んだ(=写真㊤)。11年間で進められた復興や廃炉が地域の何を変え、失わせたのか。これまでの取材の蓄積と大熊町・浪江町からの中継を交え、12年目を考える足掛かりとした。また、JNNの「東日本大震災11年プロジェクト つなぐ、つながる」の一環として、福島の海を守る漁師と学者の姿を描いた。震災翌年の12年から夕方ニュースで不定期に続けるシリーズ企画「復興の現在地」は、直近の1年でも約50本を放送。9日には、奥秋直人アナウンサーが東京電力福島第一原発の原子炉建屋内からリポートし、廃炉の現状を伝えた。

福島放送は11日、昨秋スタートした夕方ワイド「シェア!」の枠を拡大してオンエア。"11年あのとき、いま、これから"を掲げ、全編で震災関連の話題を届けた。廃炉作業や処理水の海洋放出、住民の帰還の問題のほか、震災当時首相だった菅直人氏にもインタビュー。制作スタッフは「廃炉まで福島の復興は終わらない」「10年を過ぎて"終わり"という風潮があるが、そうではないということを地元局として伝えていかないといけない」との思いで制作した。6日には、原発が立地する大熊町で被ばく牛を飼い続けてきた夫婦の決断を「家族になった被ばく牛」にまとめた。番組は当日の「テレメンタリー」でも放送している。

6日に特番「ふくしまの未来~それぞれの出発」をネットでも同時配信した福島中央テレビ。県内初の震災遺構として整備された浪江町立請戸小学校や、この春に一部で避難指示が解除される大熊町の現状などにフォーカスした。最大55の国と地域が規制していた県産品の輸入緩和をめぐっては、菅義偉前首相への単独取材に加え、ニューヨークで県産の食材がどう受け止められているかをNNN取材団が追った。同社でも震災当時を報道の現場で体験した人が少なくなっているものの、3月11日を一つの目標とすることで意識の低下は避けられているという。一方で「視聴者の関心は低くなっている印象があり、その差を埋める努力が必要」としている。

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<福島中央テレビ 菅義偉前首相への単独取材>

エフエム福島は11日に2つの特番を放送した。「ふくしまみらいプロジェクトキックオフ特番~歌は、願いだ。」は、同社とラジオ福島、さらに県内2紙のメディア4社が連携し、心に残る言葉などを"福島の未来に残したい言葉"として県民から募集。それを基に作詞し楽曲を制作するプロジェクトの発足をアピールした。20時からの「THE INTERVIEW~広島・長崎・福島」は、ロシアによるウクライナ侵攻という現在の動きにも触れながら、原爆投下や原発事故にまつわる証言を集めることで、歴史に学び伝えることの重要さを訴えた。同社は「(体験者の)記憶が薄れる中、可能な限りインタビューを残し、それをいつでも聴ける仕組みの構築も意識しながら制作を進めていく」としている。

福島テレビは11日、土曜昼の情報番組「サタふく」の特番「金曜日ですがサタふくです!」を編成。JR常磐線でのサイコロの旅など、ニュースとは異なる趣向を凝らして明るく前向きな県内の姿を取り上げた。続く夕方ワイド「テレポートプラス」は「防災大百科スペシャル」と題し、災害時の適切な避難を妨げる物理的・心理的・制度的な"避難の壁"を解説。津波や原発事故、土砂崩れ、浸水被害など、東日本大震災で得られた教訓を再確認した。同社は放送への手応えを感じつつも、人事異動などで継続取材や定点観測が困難になっている実情に触れ、「デイリー取材と両立させながら重大なテーマをどう深掘りし、県内外に発信していくか、日々苦悩している」と明かした。

この3月を「想い紡いで、これからの未来へ。」月間と位置付けたラジオ福島は11日、午前7時から約12時間にわたり特番「想い紡いで、これからの未来へ。―震災から11年」を放送。自治体や博物館などの担当者らのほか、県外の県人会などへのインタビューで福島の現在を聞き出し、県主催の式典やキャンドルナイトの模様も伝えた。また、1日からは、ミニ番組「想い紡いで、これからの未来へ。 トップインタビュー」「想い紡いで、これからの未来へ。 同未来を拓くプロジェクト」を連日放送。沿岸部の浜通り地域の13市町村長や、地域産業の回復に尽力するロボット、医療などの各分野で活躍する人々に未来に向けた取り組みを聞いた。01年から続く「大和田新のラヂオ長屋」では、家族を亡くした人や農業に従事する人など、被災地の声を随時届けており、県内外のリスナーからメッセージが寄せられているという。

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<ラジオ福島が伝えたキャンドルナイトの模様>

県内の民放テレビ4局とNHK福島放送局は、20年11月から展開してきた共同キャンペーン「福島 to 2021―あれからと、これからと→」を「これからと、その先に」として継続。2月には"11年目の一歩"と題し、各局のキャスターが互いの18時台のニュース情報番組に出演し、子育て支援や日本酒造りの取り組みなど、それぞれが取材した題材をリポートした。

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