2022年度文化庁芸術祭賞の贈呈式が2月15日、リーガロイヤルホテル東京で開かれ、各部門の受賞者が一堂に会した。贈呈式後の祝賀会で受賞者は、番組に込めた想いや喜びなどを語った。
ラジオ部門で『生涯野球監督 迫田穆成 ~終わりなき情熱~』が大賞に輝いた中国放送・坂上俊次氏は、「迫田穆成さんという本当に面白い人に出会えて、それが一つの物語になった。これからも自信をもってまい進していきたい」とコメントした。
同部門は民放の2作品も優秀賞を獲得。『鉄格子に顔押しつけて 21枚に刻み込んだ"抵抗"』で受賞した、山形放送・伊藤翼氏が、「ロシアによるウクライナ侵攻で、斎藤秀一という人物の生き方を鮮明に伝えることがより一層意味のあるものになってしまった。戦争や現代、世界の悲劇に関するニュースや番組を、山形の地から伝えていきたい」と意気込みを語った。
『ニッポン放送報道スペシャル あの日の「誓い」から10年・始まった共生社会への挑戦!』のニッポン放送・遠藤竜也氏は受賞した番組について、「盲目の小椋汐里さんがどう生きていくか。共生社会とは何なのかを問いかけながら作った。今後も小椋さんの人生の節目に新しいドキュメンタリーを作っていきたい」と今後の展開に意欲を示した。
『連続ドラマW いりびと-異邦人-』がテレビ・ドラマ部門優秀賞を獲得したWOWOW・武田吉孝氏は、「ミステリーだが、派手に人が死ぬわけでもなく、犯人捜しをするわけでもない。テーマは美術、芸術、絵画といったもの。こうした作品で評価いただけたことは、これ以上ない喜び」と語った。
民放の3番組が優秀賞を受賞したテレビ・ドキュメンタリー部門。『還らざる日の丸~復帰50年 沖縄と祖国~』の琉球放送・野沢周平氏は、「沖縄が背負うさまざまな不条理や矛盾を伝えることが、沖縄の日本復帰50年という節目にするべき仕事ではないかという思いで制作した」と振り返った。
『はだかのER 救命救急の砦2021―2022』の東海テレビ・足立拓朗氏は、「救急医たちの現状と、その働きは報われていないというメッセージを番組に込めた。今回の賞をいただいて、現実にスポットライトが当たったと思っている」と手応えを語った。
『通信簿の少女を探して~小さな引き揚げ者 戦後77年あなたは今~』のBS-TBS・初瀬川啓太氏は、「当事者の貴重な話を聞く機会がどんどん失われている。メディア、放送局の役割として、それを丁寧に拾ってこれからも伝え続けていきたい」と述べた。
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ラジオ部門を審査した放送作家の石井彰氏は民放onlineの取材に対して、「中国放送の作品は、膨大に取材した中から何を残して生かすかの編集がうまい。音だけで人を引き込む圧倒的な力があった」と評価。山形放送とニッポン放送の作品については、「派手ではないことを丁寧にすくい上げている。それはラジオの使命。どのように組み立てて番組にしていくかという意味でも面白かった」とコメントを寄せた。