18回目となる「東京ドラマアウォード2025」(主催=国際ドラマフェスティバル in TOKYO実行委員会)の受賞作が決まり、10月28日に東京プリンスホテルで授賞式が行われた。
最優秀にあたるグランプリは連続ドラマ部門が『海に眠るダイヤモンド』、単発ドラマ部門は『スロウトレイン』と、いずれもTBSテレビの作品が受賞。主演男優賞は松坂桃李さん(TBSテレビ『御上先生』)、主演女優賞は奈緒さん(NHK『東京サラダボウル』)が受賞した。助演男優賞は角田晃広さん(日本テレビ放送網『ホットスポット』)、助演女優賞は杉咲花さん(TBSテレビ『海に眠るダイヤモンド』)に贈られた(=冒頭写真/前列左から、杉咲花さん、奈緒さん、松坂桃李さん、角田晃広さん)。
三谷幸喜さんと有働由美子さんの2人が昨年に続いて司会を務め、ボケとツッコミを巧みに交代しながら和やかに進行した(写真㊦)。
初めに早河洋実行委員長(民放連会長)が、民放とNHKが切磋琢磨して日本のテレビドラマを発展させてきたことを振り返り、「テレビドラマには人々の感動を呼び起こし、心の奥深くに響く魅力がある。これからのさらなる発展に向けて応援していきたい」と開会を宣言。続いて、高市早苗内閣が発足した10月21日に着任したばかりの林芳正総務大臣が来賓として駆けつけ、動画配信サービスによって国境を越えて多くのコンテンツに触れる機会が増えていることに触れ、「テレビドラマは日本への関心をより高めてもらうための大きなポテンシャルがある。これまで以上に世界に羽ばたくことを期待している」とあいさつした。

<早河洋委員長㊧と林芳正総務大臣>
『海に眠るダイヤモンド』は連続ドラマ部門のグランプリをはじめ、個人賞の助演女優賞(杉咲花さん)、同演出賞(塚原あゆ子さん)、主題歌賞(King Gnu『ねっこ』)の4冠に輝いた。杉咲さんは「10代のころからお世話になった新井順子プロデューサーや塚原あゆ子監督をはじめ、ずっとご一緒したかった野木亜紀子さんの脚本という素晴らしいチームでお仕事をすることができた」と感謝の言葉を述べた。塚原あゆ子さんは「いまは上陸できない長崎県の端島を舞台にした壮大な脚本をいただいたとき、どうやって映像化するのかスタッフで頭を抱えましたが、CGなど最新の映像技術の力も借りて挑んだ甲斐があった。スタッフ、キャスト全員でいただいた賞です。世界に向けた轍(わだち)となるようにこれからも励んできたい」と抱負を語った。
<杉咲花さん㊧と松坂桃李さん>
TBSテレビはほかにも『御上先生』で連続ドラマ部門優秀賞、個人賞の主演男優賞(松坂桃李さん)、脚本賞(詩森ろばさん)の3賞を受賞するなど健闘した。松坂桃李さんは「"いままでない学園ドラマをつくりたい"という飯田和孝プロデューサーの熱意と詩森さんの素晴らしい脚本に共鳴したスタッフ・キャストが一丸となって取り組んだ。今日は日本映画テレビ技術協会賞で『御上先生』の撮影チームと照明チームも受賞しており、こんなにうれしい日はない」と語った。演劇の分野で活躍し、テレビの連ドラはほぼ初めてという詩森ろばさんは「創作の礎にしてきた"The personal is political"(個人的なことは政治的なこと)という心情をプロデューサーと監督がドラマの基調に据えてくださった。何かと生きにくい世の中ですが、誰かの心を助けるような作品を作り続けたい」と抱負を語った。
<演出賞の塚原あゆ子さん㊧と脚本賞の詩森ろばさん>
また、グランプリを受賞した『海に眠るダイヤモンド』と『スロウトレイン』の両作でオリジナル脚本を担った野木亜紀子さんは「ドラマの台本はあくまでも設計図にすぎない。取材と調査にはできる限りの時間をかけるが、それを視聴者の方が見えるかたちに映像へと落とし込んでいくのはキャストとスタッフの総力戦。今回の賞は出演者やスタッフのすべてにいただいたもの」と『海に眠るダイヤモンド』の表彰時にあいさつした。
<『海に眠るダイヤモンド』『スロウトレイン』で表彰される制作関係者。
いずれも中央が野木亜紀子さん)
ローカル・ドラマ賞には、北海道テレビ放送の『ススキノ・インターン~マーケ学生ユキナの、スナック立て直し記~』、中京テレビ放送の『迷子のわたしは、諦めることもうまくいかない』が選ばれた。『ススキノ・インターン』で主人公の大学生を演じた俳優の加藤小夏さんは「愛のある温かいスタッフ・キャストと北海道でつくりあげた大切な作品です。このたびの受賞は何よりのごほうび。北海道テレビ、大好きです!」と喜びを語った。『迷子のわたしは...』の池田京平チーフプロデューサーは「地方にも泣いたり笑ったり、もがきながら生きている人たちがたくさんいます。そこにはひとりひとりの物語があり、その人たちが大好きな景色やにおいがあります。それが次のドラマづくりのヒント。バラエティ番組には実績のある中京テレビですが、ドラマは3年前から取り組み始めたばかり。日テレ系列の地方4局で今年、読売中京FSホールディングス(FYCSHD)を立ち上げました。ローカルならではのアッと驚くようなコンテンツをつくっていきたい」と意欲を示した。

<左から『ススキノ・インターン~マーケ学生ユキナの、スナック立て直し記~』と
『迷子のわたしは、諦めることもうまくいかない』の関係者>
また、2024年10月17日に亡くなった俳優の西田敏行さんに特別賞が贈られた。
最後に選考委員会の中町綾子委員長(日本大学芸術学部教授)が審査講評を行い、「日本ならではの舞台の魅力が際立った作品が目立った。エンタメ性と社会性をあわせもった作品も多く、現代的なキャラクターの悩みをダイナミックに落とし込んだ脚本と演出の妙。CGなど制作技術の粋を集めた映像美も見事で、役者陣の演技も内面まで踏み込んでいた。海外の方にも十分に見ていただけるクオリティの高さに、あらためて敬意を表したい」と最大級の賛辞を送った。
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テレビドラマの国際競争力に着目し、2008年に始まった東京ドラマアウォードは市場性と商業性を重視して審査を行ってきた。2026年からは日本映画テレビプロデューサー協会が主催する「エランドール賞」に統合され、「世界に見せたいドラマがある」という理念を受け継ぐ新たなアウォードが創設されることになった。開会宣言で早河委員長は「これまでに応援くださったみなさまに深くお礼を申しあげる」と謝意を示し、閉会あいさつでも実行委員会の山名啓雄副委員長(NHK専務理事)が引き続いての協力を呼びかけた。また、司会の三谷幸喜さんはフィナーレで「ドラマは感動を紡ぐもの。NO TV DRAMA, NO LIFE!」と締めくくった。
<盛大なコンフェッティでフィナーレ>
授賞式の模様は東京ドラマアウォード公式YouTubeチャンネルでライブ配信され、現在はアーカイブ配信で視聴できる。また、後日、TBSテレビで放送を予定している。詳しくは「国際ドラマフェスティバル in TOKYO」のウェブサイトを参照(いずれも外部サイトに遷移します)。
「東京ドラマアウォード2025」受賞一覧(敬称略)
【作品賞 連続ドラマ部門】
グランプリ 『海に眠るダイヤモンド』TBSテレビ
優秀賞 『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』NHK
優秀賞 『東京サラダボウル』NHK
優秀賞 『ホットスポット』日本テレビ放送網
優秀賞 『御上先生』TBSテレビ
優秀賞 『夫の家庭を壊すまで』テレビ東京
優秀賞 『波うららかに、めおと日和』フジテレビジョン
優秀賞 『ゴールデンカムイ―北海道刺青囚人争奪編―』WOWOW
【作品賞 単発ドラマ部門】
グランプリ 『スロウトレイン』TBSテレビ
優秀賞 『憶えのない殺人』NHK
優秀賞 『新・暴れん坊将軍』テレビ朝日
優秀賞 『三谷幸喜「おい、太宰」』WOWOW
【ローカル・ドラマ賞】
『ススキノ・インターン~マーケ学生ユキナの、スナック立て直し記~』北海道テレビ放送
『迷子のわたしは、諦めることもうまくいかない』中京テレビ放送
【個人賞】
主演男優賞 松坂桃李 『御上先生』TBSテレビ
主演女優賞 奈緒 『東京サラダボウル』NHK
助演男優賞 角田晃広 『ホットスポット』日本テレビ放送網
助演女優賞 杉咲花 『海に眠るダイヤモンド』TBSテレビ
脚本賞 詩森ろば 『御上先生』TBSテレビ
演出賞 塚原あゆ子 『海に眠るダイヤモンド』TBSテレビ
【主題歌賞】
King Gnu『ねっこ』(TBSテレビ『海に眠るダイヤモンド』主題歌)
【特 別 賞】
故 西田敏行(俳優)