【BPO発足20年 連載企画 年表①】 BPO発足 前史から現在まで

編集広報部
【BPO発足20年 連載企画 年表①】 BPO発足 前史から現在まで

2003年の発足から7月1日で20年となるBPO(放送倫理・番組向上機構)。放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会、放送と青少年に関する委員会の3委員会が、放送界の自律と放送の質の向上を促している。

「民放online」では、BPOの設立の経緯や果たしてきた役割、その成果などを振り返り、現在の立ち位置と意義を再認識するための連載を企画。多角的な視点でBPOの「現在地」と「これから」をシリーズで考える。 

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BPOが設立されるまでには、「やらせ」問題による放送への信頼低下や放送が青少年に与える影響をめぐる議論、そして行政による規制の動きなどがあった。本シリーズの参考資料として、黎明期からBPO発足までの放送をめぐる出来事やBPOの活動などを年表形式で2回に分けて紹介する。1回目はBPO発足までの経緯の振り返り、2回目発足後の各委員会の主な活動をまとめた(省庁名や社名、団体名などは原則として、当時の名称で表記した)。

1.BPO発足までの前史

BPOの組織や運営の仕組み、各委員会の活動内容などは、BPOのウェブサイトを参照。

1957年
6月、民放連・日本テレビ・NHK・日本広告主協会など8者で構成する日本放送連合会が発足。

1965年
1月
、日本放送連合会内に「放送番組向上委員会」が発足。個別の番組への苦情に対処するのではなく、放送番組全般について、大所高所から意見を述べることが目的。

1969年
3月
、日本放送連合会が解散。

5月NHKと民放連が放送倫理の高揚と放送文化の発展を目的に「放送番組向上協議会」を発足。

6月、「放送番組向上委員会」を再設置。

1992年
『素敵にドキュメント』(朝日放送、7月17日放送)、『どーなるスコープ』(読売テレビ、11月8日放送)、『NHKスペシャル 奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン』(NHK総合テレビ、9月30日および10月1日放送、1231日総集編放送)などの番組で"やらせ"が表面化し社会問題に。

1993年
2月
、郵政省は"やらせ"問題に関して当該3局に厳重注意し、再発防止の取り組みを当分の間、四半期ごとに報告するよう文書で要望。

3月、事態を重く受け止めた民放連とNHKは共同で「NHK・民放 番組倫理委員会」を設立。

6月NHK・民放 番組倫理委員会は、提言「放送番組の倫理向上について」をまとめ、制作現場に注意を喚起。

10月、民放連の「放送番組調査会」(9月21日開催)に特別出席したテレビ朝日の報道局長が、第40回衆院選で「反自民政権が生まれるよう報道するように指示した」と発言した、と産経新聞(1013日付)が報道。郵政省は「放送法に違反する事実は認められないが、役職員などに対する教育を含む経営管理面で問題がある」としてテレビ朝日に厳重注意。

1994年
6月
、松本サリン事件で、新聞・放送など各社は第一通報者を容疑者であるかのように報道。これが重大な誤りであることが判明し、政府・捜査当局とマスコミ各社は報道被害者として同氏に謝罪。

1995年
9月、郵政省「多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会」(多チャンネル懇談会)が発足。番組の事前表示やVチップの導入、苦情対応機関の設置などを検討。

1996年
3月TBSは坂本堤弁護士に行ったインタビューのビデオを放送前にオウム真理教幹部に見せたとする社内調査結果を公表。そのインタビューは、198911月4日に起こったオウム真理教幹部らによる同弁護士一家の拉致殺害事件において、同一家失踪の約1週間前にワイドショー『3時にあいましょう』が行ったもの。

12月、多チャンネル懇談会が最終報告書を公表。視聴者からの苦情や権利侵害などを処理・解決するための苦情対応機関の設置について、法制化を求める声と自主的な対応への期待の両論を併記。Vチップの導入は時期尚早と判断。

1997年
6月、民放連とNHKは「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)とそれを運営する「放送と人権等権利に関する委員会機構」(BRO)を設立。放送による権利侵害を救済するための初めての機関を、法律で規定されない自主的なかたちで設置。

1998年
1月、栃木県黒磯市(現・那須塩原市)で起こった中学1年生の少年による女性教師刺殺事件で、少年が「テレビドラマの主人公に憧れてナイフを買った」と供述。その後もナイフを使った事件が相次いだことから、テレビ番組の青少年への影響に関する議論が高まり、業界の対応策を求める動きが拡大。

3月、政府の「青少年対策推進会議」が放送・出版・映像ソフトなど16の関係団体に対し「自主規制の成果が目に見えて明らかになるよう」要請。

4月、首相直轄の「次代を担う青少年について考える有識者会議」が、放送事業者の自主規制の強化や"Vチップ導入"の検討を具体的に提言。

5月、郵政省が「青少年と放送に関する調査研究会」を設置。12月にまとめた報告書で「青少年向けの放送番組の充実」「メディアリテラシーの向上」など8項目を提言。

1999年
6月、民放連は「青少年と放送」問題をめぐる基本的な対応方針を理事会で決定し、会員各社に協力を要請。

2000年
4月、民放連とNHKが「放送と青少年に関する委員会」(青少年委員会)を放送番組向上協議会内に共同で設立。視聴者から寄せられる「放送と青少年」に関する意見や苦情を審議し、視聴者と放送を結ぶ「回路」としての役割を企図。

10月、放送と人権等権利に関する委員会は、元自動車販売仲介業者が架空ローン容疑で逮捕されたニュース(伊予テレビ・現あいテレビ、913日放送)で、「事件と関係ない自分の店の映像が断りもなく放送され、事件の共犯かのような印象を多くの視聴者に与えた」などと自動車販売業者が申し立てた事案について、人権侵害があったと判断。

11月、青少年委員会は、放送内容が青少年の価値観を形成し、行動の基準ともなり得るため、放送局に品位と責任のある放送を行うことなどを要望する「バラエティー系番組に対する見解」を公表。

2002年
3月、放送と人権等権利に関する委員会は、病院関係者の死亡事故について"熊本・謎の自動車事故"のタイトルで取り上げた『週刊ワイドコロシアム』(テレビ朝日、00年8月放送)について、名誉・信用の毀損を認めたうえで、捜査機関によって疑惑が否定された場合は当初の疑惑報道からの名誉回復措置をとるべきと判断。

3月、青少年委員会は、衝撃的な事件・事故の報道では子どもたちへの影響が大きいことを配慮し、刺激的な映像の使用に関しては、いたずらに不安をあおらないよう慎重に取り扱うことなどを放送局に求める「『衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮』についての提言」を公表。

6月、青少年委員会は、政府が提案する個人情報保護法案と人権擁護法案は表現活動に政府・行政の介入を認めるものであり、放送の自由を抑圧する危険を伴うものとして「法によるメディア規制に反対し、放送界の自律強化を求める声明」を公表。

12月、青少年委員会は、消費者金融CMにより青少年に悪影響が危惧される状況を見過ごすことはできないとして「消費者金融CMに関する見解」を公表。

2003年
7月、放送局自身の自律的取り組みの強化が求められる中、民放連・NHK・放送番組向上協議会・BROの4者が協議し、「放送番組向上協議会」と「放送と人権等権利に関する委員会機構」(BRO)の2団体を合併し、法人格を有しない任意団体として「放送倫理・番組向上機構」(BPO)を設置。BPOは「放送と人権等権利に関する委員会(BRC、のちに略称を放送人権委員会に変更)」「放送と青少年に関する委員会」「放送番組委員会」の3委員会を運営する組織に改組。

※2回目はこちら


<参考>
・「民間放送50年史」「民間放送70年史」「機関紙『民間放送』」(いずれも日本民間放送連盟発行)
・「BPO10年のあゆみ」(放送倫理・番組向上機構 編)

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