今年に入って米大手テレビ局で人員削減(レイオフ)が相次いでいる。
直近の3月にはディズニーが傘下のABCテレビのニュース部門で全社員の6%にあたる約200人を解雇すると報じられた。3月5日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、今回のレイオフでこれまで別々だった報道番組『20/20』『Nightline』の制作ユニットが一つに統合されるほか、平日朝の3時間番組『Good Morning America』も複数の制作ユニットを一つにする。ABCの政治ニュースサイト「538」も廃止され、スタッフ15人が解雇された。
有料テレビ契約者の解約(コードカット)が増え、広告主もテレビからFAST(広告付き無料配信サービス)などにシフトしつつある。配信市場でスポーツやエンターテインメントに注力するためディズニーが数年にわたって段階的に行っているレイオフの一環とみられる(欄外末尾の「関連LINK」も参照)。
全米で多くのテレビ局を所有するグループ企業のE.W.スクリプスも3月初旬、ローカルニュース局での人員削減を発表した。同社は2024年9月にも24時間の地上波全国ニュースチャンネルを閉鎖して200人を雇い止めしている。同様のグループ企業ではグレイ・テレビジョンが24年11月、ネックススター・メディアグループが同12月に人員削減を発表し、テグナも25年2月にファクトチェック要員を解雇した。いずれも資金難が主な理由とみられ、「全米でローカルテレビニュースの縮小傾向が加速している」とオンラインメディアのAxiosは懸念する。
25年1月にはワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)が傘下CNNの全従業員の6%にあたる210人を削減すると発表した。ケーブルテレビ部門のCNNで制作費や人件費を抑制し、計画中の新たな配信サービス事業に約7,000万㌦(約104億円)を充てるという。そのために100人の新たな雇用を生み出すとして、「大幅な人員削減とは思っていない」とCNNのマーク・トンプソンCEOは力説する。
また、25年1月にはNBCニュースが全従業員の3%にあたる40人を解雇。CNNと同様、デジタル事業に重心を移す方針で、デジタル部門で新たに50人を採用すると伝えられる。さらに2月にはケーブルニュース局のMSNBCで米脚本家組合(WGA)メンバーのライター99人が解雇された。いずれも同局の看板報道番組『The ReidOut』『Alex Wagner Tonight』『The Weekend』の放送作家だ。親会社のNBCUは2025年中にMSNBCを含むケーブルチャンネル群をBravoを除いて全て分離・独立させることを発表しており(既報)、それに向けての動きとみられる。
人気アンカーの解雇や辞任も増えている。目立ったところでは1月28日にCNNのジム・アコスタが局側との報道理念の不一致を理由に辞任。MSNBC『The ReidOut』アンカーのジョイ・リードも2月下旬に突然の解雇を言い渡された。いずれも、反トランプ政権の姿勢を前面に打ち出していた大物アンカーだ。