米FCC 9月30日にメディア所有規則の見直しを公開審議 業界内は賛否対立

編集広報部
米FCC 9月30日にメディア所有規則の見直しを公開審議 業界内は賛否対立

米連邦通信委員会(FCC)は9月30日にワシントンD.C.で公開会議を開くことになった。9月9日に公表された暫定議題によると「メディア(放送局)所有規則の見直し」が中心になる模様だ。4年ごとに義務づけられている包括的な規制見直しの一環で、このほかの議題として有線インフラ整備の加速、無線インフラの規制負担軽減、刑務所内の違法携帯電話対策、"時代遅れ"の有線規則の削除――が挙げられている。

現行規則の維持・修正・撤廃の是非についてFCCはすでに広く意見募集してきたが、9月30日の会議に向け、あらてめて「放送局所有規則の見直し」で意見募集を呼びかけた。対象となるのは以下の3つの規則だ。

①ローカルラジオ所有規則=同一の放送市場で単一企業が直接所有できるラジオ局数を制限。小規模市場は3局まで、大規模市場は8局まで。
②ローカルテレビ所有規則=同一の放送市場内で単一企業が直接所有できるテレビ局を2局までに制限。
③二重ネットワーク規則=4大ネットワーク(ABC、CBS、FOX、NBC)間の合併を禁止。

いずれも所有の集中を制限する中核的な規則だ。ただし、単一の放送局グループが全米世帯の39%を超えてリーチすることを禁じる「全国所有上限」は今回の議題には含まなかった。FCCは別の手続きで検討するとの観測もある。

競争・地域性(ローカリズム)・多様性という政策目標を引き続き重視しながら、デジタル配信の普及や広告市場の変化を踏まえ、新たな評価基準を検討すべきかを問う内容といえる。オンライン動画配信の拡大でネットワークが系列局を介さずに番組を直接配信できるようになったことから、系列局との力関係の変化や地域報道への影響も議論の対象とされる。

これに先立ちFCCが3月に始めた意見募集(既報)に寄せられた意見は8月末時点で233件(米放送・通信業界のオンラインメディア「TV Tech」調べ)。規制緩和の賛成派と反対派が真っ向から対立しているという。

賛成派の中心は全米放送事業者連盟(NAB)で、ABC、CBS、FOX、NBCの各系列局やNexstar、Sinclair、Gray、Scrippsなど主要事業者が連名で規則撤廃を要望。NABのカーティス・ルジェット会長は「ビッグテックが無制限に市場を拡大するなか、放送局だけが時代遅れの規制に縛られるのは不当」「規則を近代化することで地域ジャーナリズムや地域投資が強化され、スポーツ中継の提供につながる」と見直しを強く求めている。

反対派は労働組合、消費者団体、公民権団体など幅広く、所有の集中が「再送信同意料の高騰や地域性・多様性の喪失を招く」と警鐘を鳴らしている。労組の全米放送従業員・技術者協会(NABET-CWA)は「統合は歴史的に地域ニュース縮小や雇用悪化を招いてきた」と主張、消費者団体も「小規模局やマイノリティ所有局の競争力を削ぐ」と批判する。「規則変更の権限を持つのはFCCではなく議会」との主張も少なくない。

有料テレビ業界も反対の立場だ。全米インターネット・テレビ協会(NCTA)や全米テレビ連盟(ATVA=消費者・ケーブル会社・衛星放送事業者などの連合体)が「規制緩和は再送信同意料を上昇させ、消費者負担を増大させる」と強く反発。あわせて「UHFディスカウント」の特例* を廃止するよう求めている。

これらの課題をFCCが公開会議でどう整理し、今後の方向性を探るのか――業界が注視している。


* UHFディスカウント=UHF局の世帯到達度を計算上「半分」と見なす特例で1970年代に導入された。アナログ時代はVHFが技術的に優れているとされ、UHFは不利を補うために半分のカウントで視聴世帯数を計算できていた。現在は受信環境が改善したが、依然として特例が残されたまま。これを適用するのは「二重の優遇」と批判されている。   

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