記者やディレクターなど報道の実務者のスキル向上とよりよい報道の実現を目指す「報道実務家フォーラム2023」が4月28―30日の3日間、早稲田大学国際会議場で開かれた。報道実務家フォーラムと早稲田大大学院政治学研究科ジャーナリズムコースの主催で、2017年から毎年開催している。今年は47の講演をリアルとオンラインのハイブリッド形式で実施した。
民放onlineは3つの講演を取材。今回は「"タブーなき"選挙報道を考えよう~本当に伝えるべきこと」と題した講演を紹介する。このほか「TBS調査報道ユニットとNEWS DIG好調の秘密とは」、「旧統一教会と地元政治の関係を追求する富山・チューリップテレビ」の講演は掲載済み。
選挙報道は今のままでいいのか――。テレビ東京の選挙報道や2022年6月に始めたYouTubeの番組『参院選"タブーなき"一問一答』について、同社報道局の豊島晋作氏が講演した。
テレビ東京はYouTubeチャンネル「テレ東BIZ」で、第26回参院選の公示日である6月22日の少し前から投開票日である7月10日の前日まで計26本の番組を配信した。「創価学会の自民党への影響力は?」や「世襲議員は国民の代表と言えるの?」といった視聴者からの質問に対し、豊島氏や篠原裕明・官邸キャップが答える趣向で、双方向性を大切にしたという。豊島氏は「民主主義の決定プロセスにおいて最も情報が必要なときに放送局は画一的な報道しかできなていない。このままでいいのかという問題意識からネット配信に至った」と説明した。
テレ東BIZの主な視聴層は50、60代だが、同シリーズは普段より若い人の視聴が多かったという。最近では若者が何かを調べるときに動画検索をすることが多いことに触れ、豊島氏は「既存メディアは動画をネットに掲載する必要がある」と説いた。また、同番組を経た気づきとして「YouTubeでは、ネタを取ってくる記者よりも、原稿を書くのが得意な記者が喋り手として才能を発揮するとわかった」と話した。
また、陰謀論との向き合い方にも話が広がった。メディアが取り上げない出来事が陰謀論の温床となるとし、「日本でも既存メディアに不信感を持つ人は潜在的にいる。答えにくいことに対してどう答えていくかが問われている。記者が自分の言葉で話すことが重要視されていくのではないか」と締めた。