【onlineレビュー】あの日の感動をもう一度  『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム 公式余韻本』を読んで

梅本 樹
【onlineレビュー】あの日の感動をもう一度  『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム 公式余韻本』を読んで

「onlineレビュー」は編集担当が気になった新刊書籍、映画、ライブ、ステージなどをいち早く読者のみなさんに共有すべく、評者の選定にもこだわったシリーズ企画です。今回は『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム 公式余韻本』を、2月18日の東京ドームにリアルで足を運んだ民放連きっての"リトルトゥース"を自認する若手事務局職員に紹介してもらいます。


今年2月18日(日)、「オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム」が行われた。リスナーの呼称であるリトルトゥース5万3,000人が東京ドームを埋め尽くした光景が圧巻だった(パブリックビューイングと配信を含めると16万人がライブを楽しんだ)。 

あれから5カ月たった7月18日、書籍『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム 公式余韻本』(以下「余韻本」)が新潮社から刊行された。そこに満載された写真やリポートを見て、あの日の光景がまざまざとよみがった。 

筆者は当日の模様を幸いにも会場で見届けることができた(その模様はこちら)。その日のイベントの余韻は凄まじく、筆者は翌日の19日、特に用もないのに、なにものかに導かれるように東京ドームに足が向かっていた。だが、会場はすでに別のアーティストのライブに向けた準備が進んでおり、昨晩の余韻などほとんど感じられなかった。 

イベントから1週間ほどは、ライブを楽しんだほかのラジオパーソナリティや芸人、リトルトゥースたちの感想がSNSなどで多くみられた。しかし、時がたつにつれ、それも減っていった。今では余韻を感じる機会もなくなり、「ラジオリスナーで東京ドームを埋め尽くす」というあの日の光景が本当にあったことなのか、ひょっとして夢ではなかったかと思うこともしばしばだった。

だが、この余韻本にてんこ盛りされた250点以上の写真と1万4,000文字の密着リポートを通じて、あの日の感動や会場の温度感を一瞬にして思い出すことができたのだ。出演者や「チーム付け焼刃」(番組スタッフの呼称)などによる振り返りから、普段のラジオの面白さをイベントとして成立させるために、これほどの人たちの努力が必要なのだということを痛感する。

若林正恭さんと春日俊彰さんがリスナーの質問メールに答える企画では、それぞれの熱い思いを読み取ることができる。特に春日さんのインタビューでは、普段みえにくい本心を知ることができて心が躍った。また、最後に掲載されている若林さんの書き下ろしエッセイには、東京ドームに込めた気持ちや、リスナーや春日さんへの思いがたくさん詰まっていて、とても胸を打たれた。

あらためて当時を振り返ってみると、いろいろなメディアが取材記事を掲載していたが、自分自身の記事を含め、どの記事やコラムも、あのイベントの魅力をうまく説明できていなかったように思える。オードリーのことをバラエティ番組の巧みなMCや、イロモノ的な筋肉芸人だと思っている一般的な視聴者や、ラジオにあまり馴染みのない方には、なかなか伝わらなかったのではないだろうか。しかし、余韻本を読んで、説明が難しい理由が分かった気がする。そう、余韻本に散りばめられたエッセンスを全部詰め込んで、ようやくあのイベントを説明できるのだ、と。

この余韻本はあの日の"奇跡"が詳細に記された、リトルトゥースにとっての"聖書"なのだと思う。私のように、番組を長年聴き続けてきた者にとって、それほど、何度も読み返したくなる一冊なのだ。

いろんなことに悩んでいた思春期のころ、ニッポン放送の『オードリーのオールナイトニッポン』を聴き始めた。大学卒業までは毎週、同じ放送を2、3回と聴き直していた。25歳になった今、時間の使い方が下手で、まったく聴くことができていない。それでも、2、3週に一回ぐらい聴いてみると、2人のくだらない話がただただ面白い。また同じ話をしていたり、日常の一部について話したりしているだけなのに、なぜか聴いてしまうのだ。

「この番組が私の生きる希望だ」とまでは言わないが、心を少し楽にしてくれる。ラジオパーソナリティというのはリスナーに寄り添ってくれるのが一般的だが、オードリーはそうしてくれない。でも、それが心地いい。こちらに寄り添ってくれなくていいから、2人にはこれからもしゃべり続けてほしい。


オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム 公式余韻本
オードリー著 新潮社 2024年7月18日発売 2,420円(税込)
B5判/104ページ ISBN978-4-10-355432-5

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