米国各州・地方で11月4日に注目の選挙があった。ニューヨーク市長選ではウガンダ生まれのイスラム教徒でもあるゾーラン・マムダニ氏が勝利。バージニア州知事選ではアビゲイル・スパンバーガー前下院議員、ニュージャージー州知事選はマイキー・シェリル下院議員と、いずれも女性候補が当選。3人とも民主党候補だ。同日の夜にはテレビ各局で開票報道合戦が繰り広げられた。今年は大統領選も中間選挙もない、いわゆる"オフイヤー選挙"だったが、その結果は今後を占う試金石とみなされていただけに注目度は高く、地上波、ケーブル各局ともに昨年の大統領選挙時同様に大規模な報道態勢を敷いた。
ニュース専門局のMSNBCにとって、親会社NBCユニバーサル(NBCU)から報道機能を分離し、独立運営となって(関連記事)初めての開票特番だったことも、注目を集めた。投開票日当日は、19時から看板キャスターのレイチェル・マドーを中心に人気キャスター陣が総出演し、深夜まで継続的に開票結果を伝えた。地上波のNBC Newsとは異なる編集ライン、視点を前面に打ち出した。MSNBCはこの夜、プライムタイム(20〜23時)の平均視聴者数で292万人を記録し、競合するFOXニュース(276万人)とCNN(168万人)を上回り、ケーブルニュース局で首位に立った。ニールセンによれば、MSNBCにとって2024年大統領選以来の高視聴者数だったという。
トランプ政権に友好的なFOXニュースは、例年どおり州ごとの分析を展開した。プライムタイム視聴者数ではMSNBCにトップを譲ったが、この日1日全体の平均視聴者数では197万人と他局を上回った。選挙前日の11月3日から6日までの視聴者数でも、MSNBCとCNNを抑えてトップとなった。
CNNは従来のケーブルチャンネルでの放送に加え、今年は初めて、新たなサブスクサービスである有料配信の「All Access」* 限定の開票ライブ番組を実施した。この配信番組ではアンカーやコメンテーターらがソファに座り、飲食しながら選挙結果を議論するという型破りな形式を採用。従来のニュースデスクを離れ、若年層やデジタル視聴者向けのリラックスした雰囲気の"カジュアル報道"を打ち出したことが話題となった。CNN幹部は「伝統的な報道と並行して、ストリーミング視聴者にライブ感のある対話の場を提供する」としており、今後の報道モデル転換を示唆する試みとみられている。
このように、リニアと配信の両方で報道したケーブル局に対し3大地上波局は"オフイヤー選挙"を意識して報道の大部分を自社の配信チャンネルに移行した。 ABCは19時から配信ニュースチャンネル「ABC News Live」で開票報道を開始。NBCも配信専門チャンネル「NBC News Now」で、CBSも配信専門チャンネル「CBS News 24/7」で開票特番をライブ配信した。このほかNewsNation、PBS、Scrippsなど中堅の地上波・ケーブル局でも、デジタル併用型の報道強化が目立った。
デジタルでは、FOXニュースのYouTube再生が1,016万回、MSNBCが944万回、CNNが584万回に達し、ネット上での視聴拡大が目立った。
* 2025年8月に始まったサブスクリプションサービス。月額29.99㌦(約4,700円)でESPNの主要なケーブルテレビチャンネルとESPN+のコンテンツに加え、オリジナル番組やライブイベントをすべて視聴できる(関連記事)。
