くすぶる米国内のTikTok 売却か撤退か サービスは継続中

編集広報部
くすぶる米国内のTikTok 売却か撤退か サービスは継続中

2025年1月19日を期限に「米国事業売却もしくは米国市場撤退」を迫られていたTikTok(その経緯は既報)は、1月20日のトランプ大統領の大統領令署名によりその期限が75日間延期され、とりあえず米国内での一命を取りとめた(冒頭画像は期限延長を伝えるAxios誌)。TikTokの親会社である中国系の「バイトダンス」はこの間に売却先を模索することになったが、有力候補としてマイクロソフトとオラクルの名前が浮上している(1月26日現在)。1月20日には、それまで自国企業の売却を渋っていた中国政府が一転、「民間企業は市場原理に基づき独自の判断で売却できる」との見解を発表。米業界側も安全保障上の懸念を払拭する解決策を模索することで、今後は売却交渉も進むものとみられている。オラクルといえば大富豪ラリー・エリソンの経営で、息子のデヴィッド・エリソンはパラマウント・グローバルを買収するスカイダンスの経営者だ。24年末には「イーロン・マスクがTikTokを買収か?」とのうわさも飛び交ったが、こちらはTikTokがきっぱりと否定している。

今回のTikTok騒動は冒頭の既報のような経緯をたどり、米最高裁は1月17日にTikTok側が求めていた新法による禁止措置の差し止めを却下し、1月19日からの法律施行が正式に決まった。これを受けてTikTokは1月19日に米国内でのアプリ運営を一旦停止。App StoreやGoogle Playなどからもアプリを削除した。しかし、この日トランプ大統領が「20日の就任式直後に期限延期の大統領令を発する」したこともあり、サービスは再開されている。

ただし、延期されたのはあくまでも「米国事業売却もしくは米国市場撤退」の「期限」。新法自体は有効でアプリストアでは1月19日以降もTikTokは除外されたまま。既存のユーザーはスマホにTikTokアプリを残していれば、そのまま使用することができるが、アプリはアップデートされない。アプリを削除した既存ユーザーと新規ユーザーは現時点ではダウンロードできなくなっている。Appleはこれについて「企業としては法律に従う義務がある。新法の下、TikTok、CapCut、Lemon8ほかバイトダンス所有のアプリは、2025年1月19日以降米国内のApp Storeではダウンロードもアップデートも不可」と説明している(その後、Android版は2月8日から公式サイトで直接ダウンロード可能になった)。

このようにTikTokはかろうじて米国内の運営を続けているが、足かせがはめられたままの状態でもある。それだけにMeta、X(前Twitter)など競合するソーシャルメディアはTikTok市場に食い込もうと余念がない。MetaはInstagramのショート動画機能(リール)を改善し、これまでより長い動画をアップロードできるようにしただけでなく、Instagramに動画をアップロードしたTikTokクリエーターへのキャッシュバックなどのキャンペーンを実施中だ。XもTikTokスタイルの縦長動画専用のフィードを追加している。

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