U-35の社員が企画・運営した「#らじふぇす」を開催 BSSラジオ 手応えとこれからをスタッフに聞いた

やきそばかおる
U-35の社員が企画・運営した「#らじふぇす」を開催 BSSラジオ 手応えとこれからをスタッフに聞いた

新型コロナウイルスが5月に感染症法上の5類に移行したこともあってか、今年(2023年)は4年ぶりにラジオのイベントを復活させたラジオ局が多かった。なかでも山陰放送(BSSラジオ)は「久しぶりにイベントを開催するのだから、新しいことを」と35歳以下の若手社員で構成する「U-35プロジェクト」を立ち上げ、9月30日にラジオとアナウンサーを軸にしたイベント「#らじふぇす」を米子市の本社前庭で開催した。

ステージではBSSラジオの番組でおなじみのアナウンサーが一堂に集まった公開生放送や「アナウンサー私物オークション」をはじめ、「#らじふぇす」オリジナルグッズ販売、地元で人気の8店舗の味が楽しめるフードブース、アナウンサーによる紙芝居ブースやフォトブース、こども縁日などが設けられ、地元のみならず、北海道や沖縄からはるばる訪れた来場者も含めて大勢の人でにぎわった。

そこで、今回の「#らじふぇす」について、「U-35プロジェクト」のリーダーで営業局の澤田祥太氏と副リーダーの森谷佳奈アナウンサーに話を伺った。「#らじふぇす」には筆者も少しだけお手伝いさせていただいたので、その経験も振り返りながらインタビューした。

IMG_5679.JPG

<左から澤田氏、松原佑基アナウンサー、森谷アナウンサー/『森谷佳奈のはきださNight』
では澤田氏、松原アナも出演してリスナーからイベントやグッズのアイデアを募った>

学生からは「一緒に作りたい」

――「#らじふぇす」の反響はいかがでしたか?
森谷:反響がよかったのはもちろん、遊びに来てくれた小学生から「私も『#らじふぇす』のようなイベントを作りたいです」とか、大学生からは「就職したら一緒に『#らじふぇす』を作りたいです」といったメールもいただきました。
澤田:オリジナルグッズの反響もよく、早々と完売したものが多くて驚いています。飲食店のブースも盛況で、出店した皆さんも喜んでくださいましたし、イベント自体も黒字でした。

――アナウンサーの出演がメインで、リスナーとの距離感も近かったですね。
森谷:地元の放送局を愛してくださる方の存在はとてもありがたいです。今回のイベントはラジオを軸に特に当社のアナウンサーとの距離を縮めるためのイベントというコンセプトになりました。
澤田:なかでも若手の松原アナウンサーは、コロナ禍の入社でイベントの出演自体が初めてだったので、松原を可愛がってもらうような企画も『森谷佳奈のはきださNIGHT』 のリスナーの皆さんと一緒に考えました。

グッズは「#らじふぇす」のオリジナルで

「#らじふぇす」のグッズは番組のグッズではなく、あえて「#らじふぇす」オリジナルのグッズを開発することにした。デザインに力を入れており、ポスターやクリアファイルに使われたメインビジュアルは、森谷アナと何度も仕事をしている制作会社に依頼。するとたくさんのアイデアが出てきたという。

ポスター.jpg

――かっこいいポスターですよね。
澤田:森谷と松原のポスターが完成して社内で披露した時に「今までになかったようなイベントになりそう!」という空気になりました。
森谷:ポスターが完成してSNSで公開したところ、リスナーの皆さんからもとても好評でした。

ラジオ番組のグッズといえば従来はプレゼントするもので、販売はしないことが多かったが、特にここ数年は"推し"(ファン)がアーティストやアイドルグッズを買って応援するように、"推しのラジオ"のグッズを買って番組を応援する流れが浸透してきた。

普段からライブに行ったり、グッズを購入したりして楽しさを体感している「U-35プロジェクト」のメンバーからのアイデアも、グッズの開発・販売の鍵を握った。

なかでもガチャグッズ(アナウンサーの写真入りバッジ/※一部スタッフの写真のバッジもあり)が好評で早々と完売した。森谷アナは「最初はどれほどの反響があるのか不安だったのですが、ふたを開けてみるととても好評でした」と話す。

親子連れも楽しめるブース「紙芝居コーナー」「こども縁日」もにぎわった。特に「紙芝居コーナー」はアナウンサーの腕の見せどころ。たくさんの子どもたちが物語の世界にのめりこんでいた。「#らじふぇす」はもともとラジオファンが楽しめるイベントとして企画したものの、親子連れも多いことが予想されるなかで「子どもが退屈しないように」との想いから出たアイデアだという。

とっさの判断で実現した「お見送り」

午後からはアナウンサーが多数出演した2時間の公開生放送が行われ、ラストはアナウンサー全員による"お見送り"。社屋の入口に一例に並んだアナウンサーひとりひとりと、短い間ではあるものの、コミュニケーションが取れた。実はこの"お見送り"、当初の予定にはなかったという。「#らじふぇす」では最後にクイズ大会を行って終わる予定だったが、コーナーが始まる頃に雨足が強くなったため、内容を変更して急きょ行われたというわけだ。

澤田:僕がもともとAKB48のファンで、アイドルの握手会のようにすればお客さんとアナウンサーがコミュニケーションできて良いんじゃないかと思って、変更したんです。
森谷:とても好評で「満足した」という声をたくさんいただきました。

グッズを購入した人にサインをしたり一緒に記念撮影する......というケースは多いが、「#らじふぇす」 はその点は自由とした。「グッズを買っていない人からサインや撮影を依頼された時にアナウンサー自ら断るのははばかれるから」と澤田は言う。

局をもっと身近に感じてもらいたい

パーソナリティに宛てたメッセージを貼ることができるボードの設置も特徴的だった。こちらはイベントの前日に出たアイデアだったという。

――メッセージボードもとても良かったですね。
森谷:音楽やお笑いライブに行くとメッセージを送れる企画がありますよね。本人に直接伝わるからとても良いんです。文化祭的な手作り感が漂っていますが、それがとても楽しいんです。

会場の様子もただ配信するのではなく、若手の女性スタッフがリポーターとして登場。しゃべっているうちに本人もノリノリになってきたようで、スタッフのファンになってしまうお客さんも現れるほどだった。

――「U-35プロジェクト」として若手の社員を中心に運営して良かったことは?
澤田:誰にも遠慮せずにアイデアが出せることにあります。アイデアを出す段階で上司の顔色を伺わずにすみますし(笑)。
森谷:普段はやりとりのないセクションとのコミュニケーションが活発になって視野が広がりました。あとは、葛藤がたくさんあったぶん、精神的に強くなりましたし(笑)。
澤田:この業界は現状維持のままでいると、尻すぼみになることは間違いないので、「#らじふぇす」のように放送局をもっと身近に感じてもらえる企画を今後も立ち上げていきたいですね。ただ、プロジェクトのメンバーがかなり少人数だったので、もう少し人手が欲しいのが本音です。
――確かにそうですよね。「U-35プロジェクト」の今後の発展を楽しみにしております。

各局も秋はラジオ祭りで盛況

BSSラジオ以外にも、この秋は全国各地のラジオ局で大型イベントが開催され、いずれも盛況だった。文化放送は11月3日に「好きがつながる!もっとひろがる!浜松町ハーベストフェスタ‐浜祭-2023」を開催。文化放送、増上寺、都立芝公園などを会場に、浜松町一帯で延べ10万4,000人(同局発表)の人出でにぎわった。埼玉のFM NACK5は開局35周年をリスナーと祝うイベント「NACK5 35th PARTY~大宮いんびてーしょん~」を10月31日に大宮ソニックシティで開催。30人近いパーソナリティがリスナーと開局35周年を祝った。

大阪ではMBSラジオが11月3日に長居公園自由広場にて「MBSラジオ秋まつり2023」を開催。ABCラジオは11月12日に「ABCラジオまつり2023 しゃべろう!笑おう!歌おう!みんなの大感謝祭」を万博記念公園で開催した。同局はポッドキャスト番組を多数配信していることもあり、今年は「おしゃべりステージ」「音楽ステージ」に加えて「デジタル配信ステージ」が登場した。

このほか特徴的だったのは、イベントの盛り上がりを、SNSを通じてリスナーだけでなくラジオに触れていない層にもアピールする仕掛けだった。TOKYO FMは10月22日に開催した「TOKYO FM リスナー感謝祭 in渋谷音楽祭2023」でTikTokの撮影スタッフが演者の舞台裏の様子や大勢のリスナーが楽しんでいる様子をアップした。特にTikTokの「おすすめ」のフィールドの画面はラジオに触れていない層にも見てもらえる可能性があり、ラジオの盛り上がりの空気を伝えるチャンスとなった。

またBSSラジオの「#らじふぇす」の項でも触れたが、"推し"の番組やパーソナリティのグッズを購入することで番組を応援する流れが顕著となっている。アイドルや音楽フェスで人気のグッズを参考に、番組オリジナルのTシャツやトートバッグ、アクリルスタンド、タオルといったグッズが多い。身につけることで自分がその番組やパーソナリティを応援している証しになるのだ。これは従来からよく作られていた番組オリジナルのステッカーに通ずるものがある。番組によってはグッズを開発する段階で「どんなグッズがほしいか」リスナーからアイデアを募ることも。リスナーがグッズの開発に参加している感覚が味わえるのはラジオの強みだろう。来年はどんなムーブメントが起こるのか、とても楽しみだ。

最新記事