米国でライブテレビの視聴方法がMVPD(リニアケーブル/衛星テレビ)からvMVPD(配信経由でリニアのテレビチャンネルを提供するバンドルサービス)へと加速していることが明らかになった。調査会社ライトマン・リサーチグループ(Leichtman Research Group=LRG、本社ニューハンプシャー州)の報告によると、全米の大手MVPDは2023年第3四半期(7―9月)に合計約180万人の解約者数だった(前年同時期は約169万人)。一方、その間にvMVPDは約133万人の新規契約(前年同時期は130万人)を獲得しているという。 この結果、大手有料テレビプロバイダー事業者の契約者数は合計7,150万人。内訳は、ケーブル会社トップ7社で3,490万人、衛星・テレコムが2,190万人、大手ライブテレビ配信サービス(vMVPD)が1,470万人推定される。
YouTube TV、Hulu Plus Live TV、Sling TV、Fubo TVなど大手vMVPDは、いずれも第3四半期で契約者数を伸ばしており、合計契約者数は今回初めて米国内有料テレビ加入者数全体の20%以上を占めるに至った。
なかでもYouTube TVの躍進は注目に値すると米各メディアは報じている。親会社のアルファベット社は数字を公表していないが、LRGによると第3四半期の新規契約者数は約60万人で、契約者総数は低く見積もっても650万人程度になるという。調査会社によっては約730万人との推計もあり、それが事実ならYouTube TVは、契約者数で衛星プロバイダーのディッシュネットワーク(672万人)を追い越し、ケーブル・衛星・配信を含めた全有料テレビプラットフォームで、コムキャスト、チャーター、アルティスに次ぐ米国第4位の位置につけた可能性があるとLRGは指摘している。
全米の小規模ケーブルプロバイダー事業者に至ってはすでに、採算が取れないリニア(ケーブル・衛星)の有料テレビの販促を諦め、YouTube TVに顧客を誘導していることもYouTube TV躍進の背景にあるとLRGは分析している。全米第2位の大手ケーブルプロバイダーであるチャーター・コミュニケーションズまでもが、9月にディズニー・チャンネルがスペクトラム(チャーターのケーブルテレビ部門)でブラックアウトした際、顧客をFubo TVとYouTube TVに誘導していた 。これがYouTube TVの躍進を後押ししたと米メディアは指摘する。
このディズニー・チャンネルのブラックアウトは、必然的にスペクトラムなどMVPDの解約を加速。結果、業界全体の解約率を引き上げることにもつながったと、別の調査会社ライトシェッド・パートナーズ(LightShed Partners、本社ニューヨーク市)が分析している。同社によると、第3四半期で米トップ6の有料テレビプロバイダー事業者のコードカット率は9.3% で、前年同時期の7.5%からさらに加速したとのことだ。
ただし、一方で、無料のFASTチャンネル事業者 が有料のvMVPDを侵食しつつあり、配信をめぐる動向は依然として先が読めない。