NAB年次大会、ローカルジャーナリズムの保護訴える 

編集広報部
NAB年次大会、ローカルジャーナリズムの保護訴える 

NAB(全米放送事業者連盟)の年次大会「ステート・リーダーシップ・カンファレンス(SLC)」が3月5、6の両日、ワシントンD.C.で開かれた。全米から550以上のテレビ、ラジオ局の首脳が集まり、連邦議会議員や規制当局と業界の課題を話し合った。

初日はワシントン国立公園内の会場でNABのカーティス・ルジェット会長があいさつ。信頼できる情報源としてのローカルテレビの役割に触れ、特に大統領選挙の年はローカルテレビ局の存在がコミュニティに必要不可欠と強調した。昨年6月に連邦上院議会司法委員会を通過し、同年9月改訂版が発表された「ジャーナリズム競争・保護法案」(Journalism Competition and Preservation Act:JCPA)」 と、同5月に下院で超党派の支持を得た「全車AM搭載法案(The AM for Every Vehicle Act)」の成立が急がれると訴えた。JCPAは新聞、放送、雑誌などのニュース・パブリッシャーに、FacebookやGoogleなどの巨大IT企業に対する競争力・交渉力を持たせるという内容で、全車AM搭載法案は電気自動車(EV)を含む全車両へのAMラジオ搭載を義務づけるもの。

連邦議会側から参加したマイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州)が前記法案の審議状況を報告し、成立のためには放送局側が連邦議会議員と直接話し合うことが重要だと話した。翌日の大会2日目には参加者が全員で連邦議会議事堂を訪れ、JCPA、全車AM搭載法案、ローカルラジオ・フリーダム法案(Local Radio Freedom Act)* について、上下両院議員と懇談の機会を持った。放送業界で働いた経験もあるジョンソン下院議長は、全車AM搭載法案とローカルラジオ・フリーダム法案提案者の一人でもある。ルジェット、ジョンソンの両氏は、AIの急激な台頭とそれが放送ジャーナリズムに与える影響についても意見を交換した。

このほか議会側からは、全車AM搭載法案とローカルラジオ・フリーダム法案の提案者に名を連ねるベン・レイ・ルーハン上院議員(民主党、ニューメキシコ州)が参加。地元のニューメキシコ州で起きた山火事を例に「他の通信方法が途絶えても、ラジオだけは常に命に関わる重要な情報を流し続けた」として、両法案を成立させるべきと訴えた。

FCC(連邦通信委員会)からはアナ・ゴメス委員も参加し、全米各家庭にテレビ・ラジオ放送が行き届くことと、信頼できるローカル報道の重要さを強調。また、AIが放送・通信業界に与える影響についての考えを述べた。


* 下院の超党派議員が共同提案しているローカルラジオ・フリーダム法案(Local Radio Freedom Act:LRFA)。ライセンス収入の拡大を目指し、レコード業界がラジオ局に新たな使用料や出演料を課す法案を政府に働きかけているのをけん制するのが目的。「これ以上の負担増はローカルラジオ局が地域社会に不可欠なサービスを提供する能力を損なう」としてNABも反対を表明している。

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