【onlineレビュー】 1970~80年代のテレビ史をリアルに追体験 放送ライブラリーの企画展に行ってみた

編集広報部
【onlineレビュー】 1970~80年代のテレビ史をリアルに追体験 放送ライブラリーの企画展に行ってみた

onlineレビュー」は編集担当が注目した新刊書籍、映画、ライブ、ステージなどをいち早く読者のみなさんと共有するシリーズ企画です。今回は、10月5日まで横浜市の放送ライブラリーで開催中の企画展「テレビとCMで見る1970-1980年代」を民放online記者が紹介します。


企画展「テレビとCMで見る1970-1980年代」は戦後高度経済成長の象徴といえる日本万国博覧会(大阪万博)が開かれた1970年からバブル景気が到来する80年代後半までの、日本が最も元気で、それらと呼応してテレビが娯楽の王座として君臨していたおよそ20年間を当時の貴重な資料で振り返ろうという試みだ。

何といっても壮観なのが、順路に沿ってズラリと並ぶパネル展示。1970(昭和45)年から1989(平成元)年まで、1年ごとに、その年に話題となったテレビ番組を社会の出来事などの解説とともに1枚のパネルで紹介していく。

順を追っていくと、1970年は昭和ホームドラマの『ありがとう』(TBSテレビ)、71年はアイドル時代をけん引した『スター誕生!』(日本テレビ)、72年は時代劇の『木枯し紋次郎』(フジテレビ)、そして73年『ひらけ!ポンキッキ』(フジテレビ)、74年「長嶋茂雄選手の現役引退」、75年『俺たちの旅』(日本テレビ)、76年『徹子の部屋』(テレビ朝日)、77年『岸辺のアルバム』(TBSテレビ)、78年『ザ・ベストテン』(TBSテレビ)、79年『3年B組金八先生』(TBSテレビ)――。ドラマを中心にバラエティ、そしてスポーツの話題まであらゆるジャンルが網羅され、時空を超えて当時のテレビと時事の出来事とのかかわりが、まざまざとよみがえってくる。

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<パネルとともに台本や貴重な資料も展示>

各パネルに花を添えるのが、その年に日本レコード大賞を受賞したレコードやCDのジャケット。誰もが口ずさむことができる「歌」とともに時代があったことを跡づける。また、1970年大阪万博の「太陽の塔」模型や会場の案内図、『スター誕生!』で使われたトロフィーや長嶋茂雄引退時の関連記事とグッズ、沖縄が日本に復帰した1972年5月15日のテレビ各社の特番状況がわかる新聞のテレビ欄など貴重な資料も。情報誌『TVガイド』の表紙を飾った華やかなタレントの顔ぶれに感慨もひとしおだ。さらに、ライブラリーで公開されている当時のテレビCMを上映するコーナーでは懐かしさに思わず足がとまる(すべて見ようとすると2時間を超えるため、今回は断念した)。

1980年代に入ると、パネル写真は1980年『池中玄太80キロ』(日本テレビ)、81年『北の国から』(フジテレビ)、82年『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ)、83年『おしん』(NHK)、84年『スクール☆ウォーズ』(TBSテレビ)、85年『ニュースステーション』(テレビ朝日)、86年『あぶない刑事』(日本テレビ)、87年『独眼竜政宗』(NHK)、88年『抱きしめたい!』(フジテレビ)、89年『ハートに火をつけて!』(フジテレビ)――ホームドラマからトレンディドラマへとドラマシーンが大きくシフトしていった時代が一目瞭然だ。

番組にかかわった関係者(脚本家の倉本聰さん、ドラマプロデューサーの山田良明さんなど)による各番組の制作秘話や民放onlineでもおなじみのウオッチャー(岡室美奈子さん、太田省一さん、ペリー荻野さんら)によるイチオシ番組紹介などのコラムも楽しい。『アメリカ横断ウルトラクイズ』(日本テレビ)の早押しに使われたテーブルやウルトラハットの実物(冒頭写真の左奥)、『ザ・ベストテン』の「パタパタ」としておなじみの "ランキングボード"などの小道具も展示。また、『万博の太陽』(テレビ朝日、2024年)で橋本環奈さんが着たコンパニオンのユニフォームや『不適切にもほどがある!』(TBSテレビ、2024年)で河合優実さんが着用した高校の制服などの実物も展示され、若い世代の来場者にも好評だったようだ。

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<①時間を忘れるCMコーナー、②③ドラマの衣装展示も、
④『ザ・ベストテン』の「パタパタ」>

夏休み期間中の開催とあって、来場者は当時を懐かしむ中高年層だけでなく、子ども連れの家族など幅広かったという。ライブラリーの事務局によると、おじいちゃん・おばあちゃん世代が番組を通じて子や孫たちとコミュニケーションを深める光景も少なくなかったそうだ。また、直接その時代を生きたわけではない若い世代からは「当時のファッションや世相が"クール"でかっこいい」と、「現在のもの」として好意的に受けとめられていたようだ。

テレビの歴史をたどる同ライブラリーの「テレビとCMで見る」企画展はこれまで4回開かれてきた(2019年夏「平成ヒストリー展」、21年春「平成+令和1~2ヒストリー展」、22年夏「平成令和ヒストリー展2022」、23年夏「1980年代!1978年~1989年メモリーズ」)。つまり5回目となる今回で、1年ごとのパネルも1970年以降ほぼ現在まで出そろったことになる。残るはテレビ放送が始まった1953年~1969年と、直近数年分のパネルを新たに準備すれば、来たるべき「テレビ75年」となる2028年(あるいは「テレビ80年」の2033年)には、これまでに蓄積されたパネルを再活用して、テレビ史を総覧する催事ができるのではないだろうか――。

ネット時代になって巷には断片的な情報はあふれるようになった。しかしウェブからは手軽であっても時代のうねりをダイナミックに一望するのは難しい。見識のあるキュレーションに基づいて、時代を俯瞰する。そこにこそリアルな展示会・展覧会の意義がある。一部の関係者や研究者のためではなく、市民がもっと気軽に広くテレビ史・放送史を、楽しく正しく学ぶことのできる場としての放送ライブラリーのありがたみをあらためて感じながら横浜を後にした。


企画展「テレビとCMで見る1970ー1980年代」は10月5日(日)までです。詳しくは同ライブラリーのサイトを参照(外部サイトに遷移します)。

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