再編計画中の米ワーナーブラザースが売却も視野に パラマウントからの打診は却下 Netflix、コムキャストも関心

再編計画中の米ワーナーブラザースが売却も視野に パラマウントからの打診は却下 Netflix、コムキャストも関心

米メディア大手のワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)が10月21日、「複数企業から資産売却を含む打診があったことを受け、株主価値を最大化するための潜在的な代替案の検討を開始する」と発表した(冒頭画像はプレスリリース)。WBDは今年6月、「分社計画こそ会社の成長戦略」を掲げ、映画・配信部門を統括する「Warner Bros.」と、ケーブルネットワークと欧州向け配信事業を担う「Discovery Global」の2社体制に移行し、2026年半ばの分社完了を目指しているが(既報、続報)、それとほぼ同時に売却のうわさが米メディアでは伝えられていた。既定の再編・分社計画を進めながら、全社または一部事業の売却の可能性があることを正式に明確にしたことになる。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「売却ありきではなく防衛的な発表だ」とも伝えており、先行きは不透明だ。

WBDが発表した時点で売却先に名前が上がっていたのはパラマウント・スカイダンス(Paramount Skydance) 。今夏の吸収合併で新会社となり(既報)、映画スタジオのParamount Pictures、配信サービスParamount+、地上波CBSネットワーク、ケーブルのMTVやニコロデオンなどのチャンネル群を抱えるが、ストリーミング規模ではWBDのHBO Max(会員約1億2,600万人)に劣る。WBDを吸収して、一気に業界地図を塗り替えようというのがパラマウント・スカイダンスの狙いと見られる。すでに3度の買収提案を行っているが、報道によれば、WBDのデビッド・ザスラフCEOは「パラマウントの提示額はWBDの実勢価値を反映していない」と、企業価値の過小評価を提案を退けた理由に挙げている。WBDの2024年売上高は390億㌦(約6兆円)超、旧パラマウントの290億㌦を上回る。また、提案にはザスラフ氏に統合後の共同CEOの職を提示する内容も含まれていたという。WSJは10月21日付の記事で「今回の発表の真意は売却を容認するのではなく、買収への門戸を開くことで逆にパラマウント・スカイダンスからの買収圧力を阻止しようとしている」と報じている。

しかし、その後、10月末にはパラマウント・スカイダンス以外の大手メディア企業が続々と名乗りを上げ始めた。Netflixは当初、「旧来型メディアネットワークの所有には関心がない」と否定していたが、 買収への検討を開始したと各紙が報じた。また、NBCユニバーサルを擁するコムキャストも関心を示しているとされ、混戦の様相を呈してきた。   

アナリストの間では「WBDはハリウッドが求める資産をすべて持っており、焦って売却するより分社を完了させてからM&Aを検討すべきだ」との声もある。伝えられるように、ザスラフCEOがパラマウント・スカイダンスの支配から102年の歴史を誇る映画スタジオの独立性を守ろうとしているのか――その真意も含めて、ハリウッド再編の行方から目が離せない。

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