米ワーナーブラザーズが「制作・配信」と「ケーブル」の両部門を分社化

編集広報部
米ワーナーブラザーズが「制作・配信」と「ケーブル」の両部門を分社化

米メディア大手ワーナーブラザーズ・ディスカバリー(WBD)が6月9日、制作・配信部門の「Streaming & Studios」とケーブルネットワーク部門の「Global Networks(仮称)」の2社に分割し、いずれも上場企業として独立させると発表した。

新たに設立する「Streaming & Studios」には映画やテレビの制作スタジオ(HBO、Warner Bros. Television、Warner Bros. Motion Picture Group、DC Studios)と配信サービス(HBO Max)が集約される。「Global Networks(仮称)」にはCNN、TNT、TBSをはじめとする多くのケーブルチャンネル群、欧州の地上波チャンネルなど国際事業、さらにDiscovery+や米国のスポーツ配信事業(Bleacher Reportなど)も含まれる。つまり、今回の分社は2022年に実施されたワーナーメディアとディスカバリー・コミュニケーションズの合併(既報)を事実上巻き戻す内容となる。

Streaming & StudiosのCEOにはWBDのデビッド・ザスラフ現CEOが就き、Global NetworksのCEOにはグンナー・ヴィーデンフェルズ同CFOが就任する。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によるとWBDの総債務約340億㌦(約4兆9,000億円)のうち相当部分はGlobal Networks側に引き継がれるという。業績が芳しくないとはいえ、ケーブル事業が引き続き多額のキャッシュフローを生み出しているためと説明されている。Global NetworksはStreaming & Studiosの株式を最大20%保有し、その収益を債務返済に充てる。資金面では、WBDは米大手銀行JPモルガン・チェースからすでに175億㌦のつなぎ融資を確保しており、既存の一部債務の買い戻しに充当する。「戦略的柔軟性によって、急変するメディア環境下での競争力を高める」とザスラフCEOは分社による機動力向上と株主価値の最大化を強調している。

この分社化でHBOやCinemaxのサブチャンネルとして展開してきた「マルチプレックスチャンネル群」の整理も進む。HBO Family、ThrillerMax、MovieMax、OuterMaxの4チャンネルは今年8月15日をもって放送を終了する。HBO Familyは1996年に家族向け専門チャンネルとして誕生したが、今回の戦略見直しにより28年の歴史に幕を下ろすことになる。

既報のように、コムキャスト傘下のNBCユニバーサル(NBCU)がMSNBCやCNBCなどのケーブルチャンネル群を切り離し、新会社「Versant」として独立させると発表したばかり。コードカットの加速で視聴率や広告収入が低下するケーブルテレビ事業と、成長が続く配信事業を分離し、それぞれに最適な運営体制を構築しようとするものだ。しかし、どちらも傘下に収めるもうひとつの巨大メディアDisneyは異なる姿勢を示している。同社のボブ・アイガーCEOは6月半ばにCNBCのインタビューに答え、「現時点でテレビチャンネル事業から撤退する考えはない」と発言。同CEOは2023年7月にCNBCの取材でテレビ事業の売却をほのめかしていたが(既報)、現状は制作・配信の両資産を効果的に結びつけることで他社よりも有利に事業を展開できるとの認識を示している。

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