米メディア大手ディズニーとコムキャスト傘下のNBCユニバーサル(NBCU)は6月9日、NBCUが保有する動画配信サービス「Hulu」の株式33%分を4億3,900万㌦(約630億円)の追加額で買い取ることに最終合意した。これによりディズニーはHuluの全株を保有する親会社となり、配信戦略の再編に向けた一歩を踏み出す。
Huluは2007年にNBCU、FOX、ディズニーの共同出資で設立。19年にディズニーがFOXの娯楽資産を買収したことでHulu株を取得し、当面はNBCUと共同経営、将来的には全株所有に移行することで合意していた。23年にはNBCUが保有する33%をDisneyに買い取るよう要請していた(既報)。すでにディズニーはNBCUに買収額として約86億㌦(約1.2兆円)を支払っていたが、Huluの企業価値をめぐる両社の主張は大きく隔たりがあったため、第三者評価機関の査定による最終的な仲裁の結果、合意に至った。Huluの評価額はNBCU側の主張を大幅に下回ったもののディズニーの当初提示より高く、事実上の「痛み分け」に。追加分支払いは今年7月24日までに完了する予定で、1年半にわたった両社間の対立は決着する。
ディズニーは23年以降、Huluの筆頭株主として、ABCやFXなど系列チャンネルの番組に加え、『マーダーズ・イン・ビルディング(Only Murders in the Building)』『一流シェフのファミリーレストラン(The Bear)』などのオリジナル作品も配信。現在の契約者数は約5,500万人といわれ、黒字事業に成長している。また、解約防止策としてDisney+とHuluをバンドルにする戦略も採用。契約者はDisney+のプラットフォーム上でHuluコンテンツを視聴できる仕組みを導入した。この施策は解約率抑制だけでなく、利用時間の増加にも貢献しているとされる。
ディズニーのボブ・アイガーCEOは「今後立ち上げを予定している新たな配信サービスESPNとのシームレスな統合への道が開かれた」とコメントしている。
一方、NBCUは「Huluは配信分野への出発点となった」と振り返り、Disneyの今後に「幸運を祈る」とコメントした。NBCUは現在、自社の配信サービスのピーコックに注力しており、契約者数は約3,500万人。オリジナル番組やNBC系列の番組に加え、スポーツ中継も強化しており、来シーズンからはNBAの独占配信も予定している。