2028年のロサンゼルスオリンピックとパラリンピック(LA28)で競技会場のスポンサー命名権(ネーミングライツ)がオリンピック史上初めて導入されることになった。LA28オリンピック・パラリンピック組織委員会が8月14日に発表した(冒頭画像は同大会のロゴ)。アリーナやスタジアムにブランド名をつけないという国際オリンピック委員会(IOC)長年の方針が大きく転換する。
オリンピックやFIFAワールドカップサッカーなど国際的な大型スポーツイベントの競技場では、これまで公式スポンサー以外のブランド露出を完全に排除する「クリーンスタジアム」の原則が徹底されてきた。LA28ではスポンサー企業がネーミングライツを購入すれば、既存の会場名をそのまま使用できる。
対象となる会場は最大で19カ所。優先権はまずIOCワールドワイドパートナー(トップスポンサー)に与えられ、その後にLA28の最上位スポンサーが続く。命名権を得たコムキャストとホンダのいずれも最上位にあたる大会創設パートナー(Founding Partner)だ。権料は公表されていないが、LA28組織委員会のケーシー・ワッサーマン委員長が米メディアに話したところによると、会場や立地によっては数億㌦規模に達するという。
その第1号として発表されたのはユニバーサル・スタジオ内の「Comcast Squash Center」(スカッシュ)と、カリフォルニア州アナハイムの「HONDA Center」(バレーボール)だ。このほか「SoFi Stadium」(開・閉会式、水泳)や、「Crypto.com Arena」(体操、ボクシング)、「Intuit Dome」(バスケットボール)、「Peacock Theater」(ボクシング、ウェイトリフティング)などが候補とされる。
背景には米国ならではの事情がある。他の開催国と異なり米政府はオリンピック開催に直接資金を拠出しないため、LA28組織委員会は71億㌦(約1兆460億円)規模の予算全額を民間資金で賄わなければならない。組織委が掲げるスポンサー収入目標は25億㌦とオリンピック史上最大規模を見込む。ネーミングライツはその一環として導入された。
IOCは声明で「将来の開催地で適用可能か検証するための試験的実施」と説明。競技そのものの中立性を確保しながら、商業的価値を最大化する仕組みを模索していくという。
LA28の米国内の放送・配信は2024年パリオリンピックに続いてNBCUが担う。パリ大会で達成したオリンピック放送史上最高の広告収入の勢いを持続すべく、コムキャスト/NBCUとIOCは新たに総額30億㌦規模のパートナーシップ契約を締結。これには2036年までの米国での全プラットフォームでの中継権のほか新たな共同戦略的プロジェクトも含まれる(既報)。