YouTubeTVの再送信同意料交渉で摩擦 NBCUとは妥結、スペイン語放送局はブラックアウト

編集広報部
YouTubeTVの再送信同意料交渉で摩擦 NBCUとは妥結、スペイン語放送局はブラックアウト

地上波を中心とするリニアテレビとケーブルテレビ事業者の間で繰り返されてきた再送信同意料交渉をめぐる対立が配信の分野にも波及している。vMVPD(配信経由でリニアのテレビチャンネルを提供する有料バンドルサービス)で契約者数約950万人と米最大規模の「YouTubeTV」は親会社のGoogleとともに、この秋、NBCユニバーサル(NBCU)と米最大のスペイン語ネットワーク「TelevisaUnivision」それぞれとの再送信同意料の契約更新をめぐって対立した。

NBCUとは契約失効寸前の9月末にYouTubeTVにおけるブラックアウトを回避するため短期延長で合意し、10月2日に長期契約の締結で妥結した。新たな合意でNBC、CNBC、MSNBC、USA、Syfy、Bravo、E!、テレムンド(傘下のスペイン語放送局)などNBCUグループのすべての放送・ケーブルチャンネルがYouTubeTVで引き続き視聴できる。また、NBCUの配信サービス「ピーコック」もYouTubeの「プライムタイムチャンネル」のサービスに統合されて提供される。

一方、TelevisaUnivisionとの交渉は、10月23日現在も決裂したままブラックアウトが続いている。YouTubeTVが基本パッケージからTelevisaUnivisionの主要チャンネルUnivisionをはじめGalavision、TUDNなどを外し、契約者に月額15㌦(約2,300円)の追加料金を課す「スペイン語アドオン」枠に移行させようとしたことが発端。TelevisaUnivision側はこれを「まるでヒスパニック税だ」と非難し拒否。9月末の契約満了時点で同局がYouTubeTV上から削除された。

YouTubeTV側は「交渉の過程で求められた対価が過去4年間の視聴実績に見合っていない」と主張。TelevisaUnivision側は「数百万人に及ぶヒスパニック系視聴者の軽視」と反発。9月末には米連邦議会のヒスパニック議員連盟(Congressional Hispanic Caucus)が両者に早期合意を求める書簡を送るなど政治問題化している。

TelevisaUnivisionは、Hulu + Live TVなど他のvMVPD事業者とは契約を更新しているが、最大手のYouTubeTVとの決裂はスペイン語圏市場での加入者動向や広告価値にも影響を及ぼす可能性がある。米国内のスペイン語話者は6,000万人近く、購買力も年間約2兆6,000万㌦規模といわれる。NAB(全米放送事業者連盟)は「これだけのマーケットの視聴環境をビッグテック企業が左右できる現状は、競争と消費者利益を損なう」と懸念。YouTubeTVはParamount Skydance、Fox、Disneyなどとの再送信同意料交渉でも綱引きが続いており、次の焦点となりそうだ。

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