米FCCが放送局の所有規則見直しを決定 ATSC3.0の移行促進策も近く審議

編集広報部
米FCCが放送局の所有規則見直しを決定 ATSC3.0の移行促進策も近く審議

米国では連邦政府の予算失効を受け政府機関の一部が10月1日から閉鎖されており、連邦通信委員会(FCC)も10月23日現在ほとんどの業務を停止している。その直前の9月30日、FCCは既報のとおり定例の公開会議を開き、放送局の所有規則を包括的に見直すことを委員3人の全会一致で正式に決定した(冒頭画像は同日の会議のもよう=FCCのYouTubeチャンネルから)。

承認されたのは「規則制定案公示(Notice of Proposed Rulemaking=NPRM)」で、①単一企業による同一市場内でのテレビ局保有数を制限する「ローカルテレビ所有規則」、②ラジオ局の所有上限を定めた「ローカルラジオ所有規則」、③上位4大ネットワーク(ABC、CBS、FOX、NBC)の合併を禁じる「二重ネットワーク規則」――の3項目について広く意見を募ることになった。

現在、テレビ放送所有規則では、単一放送局グループが全米テレビ世帯の39%を超えるリーチを持つことを禁じており、例外としてUHF帯の免除や複数局保有を容認する規則が存在する。しかし、放送事業者からは「これらの規制が競争力を損ねている」との不満が根強く、全米放送事業者連盟(NAB)も「ストリーミングなどの新興勢力との競争環境を公平にするため、ルールの見直しは不可欠」と長年訴えてきた。今回の決定の背景には、今年7月の第8巡回区控訴裁判所判決の影響もあるものとみられる。

このNPRMは具体的な改定案を示してはいない。このため、現行規則が▶ローカル放送局間の競争をどの程度促進しているのか、▶ローカル局が直面するストリーミングサービスやオンライン動画の普及といった課題に照らして、地域社会へのサービス向上と競争力維持を可能とする効率化を阻害していないか、▶ネットワークにのみ現行規則を適用することが正当化されるかどうか――について広く意見を聞く。FCCはその結果を踏まえて最終報告案をまとめる予定だ。

FCCのブレンダン・カー委員長は採決後、「放送を独立した市場ではなく、より広いメディア市場の一部として捉えるべきだ」と述べ、「地域社会に信頼されるニュースや情報を提供するローカル局への投資促進を最優先とする」と強調。一方、唯一の民主党委員であるアナ・ゴメス氏は、ABCの『Jimmy Kimmel Live!』が一放送中止となった問題の背景にカー委員長の働きかけがあったとされたことに言及し、「表現の自由の根幹を揺るがすものだ」と批判。NPRMの採決には賛成票を投じたものの、「大企業の経済的利益のために、ローカルメディアの本来の義務と公共の利益を犠牲にすべきではない」とくぎを刺した。

さらにFCCは10月7日、次世代放送規格「ATSC 3.0(NextGen TV)」への移行(既報)を加速させるための規則案も公表した。現行のATSC1.0から3.0への切り替え時期を放送局が自主的に判断できるようにする方針が「暫定案」として盛り込まれており、1.0と3.0のサイマル放送に関する規制を緩和する方向性も打ち出した。10月28日の公開会議で採決される予定だが、政府機関の閉鎖が続くと、会議そのものが予定どおり開催できるかどうかは不透明な状況だ。

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